翻訳作品紹介
To English
第1回選定作品
作品タイトル
『しぐれ茶屋おりく』
作家名
翻訳者
英語版 / Royall Tyler published
初版
1969年 講談社
キーポイント
  • 昭和を代表する大女優・山田五十鈴主演で舞台化され、好評を博す
(あらすじ)
「あたしの店のしぐれ茶づけは366日食べたって飽きないんだから」
 
 東京の下町、隅田川沿いの芦の湿原の中に建つ風雅な料理旅館「しぐれ茶屋」。外観は農家風だが、内部は贅沢な数寄屋造りで、隅田川でとれる魚と精進料理を出している。料理の最後に出す、伊勢の桑名から取り寄せた蛤で作る茶づけが女将であるおりくの自慢である。
 おりくは、貧しい家に生まれ、19で吉原に売られ田舎から上京した。女郎屋で商売を覚え、沼地同様の地で商売を始めた。立地条件の悪さから、商売は苦戦するだろうと誰もが思ったが、歌舞伎役者が一番乗りに客になってくれ、友達を誘って訪れてくれるようになる。客たちにうけるか心配しながら出した蛤茶づけが好評となり、しぐれ茶屋の名はたちまちに広がっていく。こうして、この茶づけを求めて、伊藤博文をはじめ、政治家・実業家・芸人ら著名人がしぐれ茶屋に通うようになる。
 しぐれ茶屋に来る客たちは、色恋沙汰など様々な相談事を持ち込む。そのたび、酸いも甘いも噛み分け、人情に厚いおりくが、忙しく駆け回るのだった。
 本作は、明治末期の東京下町の情景、そこに生きた人々の人情を描いた、浅草で生まれ育った著者の代表作。
 
ジャンル:大衆小説
 
受賞:吉川英治文学賞受賞作(第3回)
(優れた国民文学に贈られる賞)
return