翻訳作品紹介
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第1回選定作品
作品タイトル
『夕暮まで』
作家名
翻訳者
フランス語版 / Silvain Chupin published
ロシア語版 / Yura Okamoto published
初版
1978年 新潮社
1982年 新潮社(文庫版)
キーポイント
  • 流行語「夕ぐれ族」の語源となり社会現象となった問題作
(あらすじ)
「性の秘密を繊細に描いた、男と女の奇妙な関係」
 
妻子ある中年男性の佐々(ささ)は、あるパーティで22歳の杉子(すぎこ)と出会った。自分はヴァージンだという杉子に興味を持った佐々が杉子を誘い出し、ふたりの奇妙な関係がはじまった。
ベッドに横たわる杉子は、脚を開かない。佐々は、強く締め合わせた腿の付根の窪みに、オリーブオイルを滴らせ、そこに軀を重ねる。ふたりで行うあらゆる性戯には積極的に没頭するが、最後の一線だけを頑なに拒み続けている杉子はヴァージンのままである。いわゆる擬似性交は、真っ白なウェディングドレスで、きれいな結婚式をあげるためだと杉子は言う。しかし、そんな杉子の陰には、やがて若い男の存在が見えてくる。
佐々は、杉子の本心が見えないもどかしさに軽い疲労感を覚えながらも、嫉妬や怒りなどの感情に振り回されることはない。ベッドではふたりの探りあいが続き、ある日、抵抗もなく、ふたつの軀は交接のかたちになってしまう。佐々は、そのとき、杉子がすでにヴァージンを喪失していたことを知る。その相手が若い男であることも。そして、ふたりには、やがて別れが訪れる。
セックスを媒介にした男と女の駆け引きのなかで、ポルノグラフィー的でありながらも、人間の性の深遠に迫る問題作。
 
ジャンル:純文学
 
受賞:野間文芸賞受賞作(第31回)
(日本の文芸の質的向上と発展に寄与する優れた作品に贈られる賞)
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