翻訳作品紹介
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第2回選定作品
作品タイトル
『中陰の花』
作家名
翻訳者
フランス語版 / Corinne Quentin published
初版
2001年 文藝春秋
2005年 文藝春秋(文庫版)
キーポイント
  • 現役僧侶である筆者が、生と死を見つめ独特の視点から描いた話題作。
(あらすじ)
「人は死んだらどこへ行くのか? 根源的な問いに迫る、現役僧侶による物語」
 
予知能力のような神通力を持つ老女ウメは、自分の死ぬ日を予言していた。その日、ウメの病院に向かう禅寺の住職、則道(そくどう)に、妻の圭子(けいこ)が人は死んだらどうなるのかとたずねた。
則道は、圭子が寺で光を見たり、亡くなる人の気配を感じたりするという霊的体験をしていたことを知らなかった。それだけではなく、圭子が4年前に流産で亡くした子供のことで悩み、成仏できたのかと心を痛めていることも知らなかった。則道には、死後の世界について問われても、あるのかないのか確信がない。理論的に「仏教では、人は死ぬと極微(ごくみ)という単位となり、あまねく広がっていくと考える。極微は中性子と同じ大きさである」などと説明しても、圭子の心は癒えない。則道は、寺にいながら自分の子供に戒名も与えず、お経もあげていなかったことを思い出した。
圭子は子供を亡くしたときから、包装紙を細く切って紙縒りを作っていた。指の指紋が消えるほど作り続けて、ひとり供養していたのだ。そして、ウメだけがその気持ちを理解していた。そのウメの葬儀を機に、圭子は則道に、子供のためにお経をあげてほしいと願う。 
死後の世界を取り上げ、則道と圭子が夫婦の関係を見直しながら、わが子の供養をしていくことで、死を受け入れていく表題作「中陰の花」より。
 
 
ジャンル:純文学
 
受賞:芥川龍之介賞受賞作(第125回)
(優れた純文学短編作品中最も優秀なるものに贈られる賞)
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