翻訳作品紹介
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第2回選定作品
作品タイトル
『山月記ほか』
作家名
翻訳者
英語版 / Paul McCarthy & Nobuko Ochner published
フランス語版 / Véronique Perrin published
初版
1969年 新潮社(文庫版)
キーポイント
  • 夭逝した著者の、「芸術の高貴性を現出」させた代表作。
  • 人間存在の根源的不安に向かい合い、芸術家の内的狂気を描いた作品。
(あらすじ)
「芸術的才能への自恃と懐疑を告白する変身譚」
 
唐代の伝奇小説「人虎伝」に素材を仰ぎ、独特の緊張感で人間性の内奥に迫る作品。
官吏の袁傪(えんさん)は、「人食い虎」が出るという道を急いでいると、虎に出くわす。その虎は叢に隠れ、袁傪に語りかけ始める。
虎は、袁傪のかつての友人、李徴(りちょう)であるという。若くして官吏登用試験に受かったが、詩人の道を選び、杜甫や李白に並ぶ作品を残そうと隠遁して試作に励んでいた。しかし名声は思いどおりにはならず、生活に窮し再び官吏となったが、出世した同僚の下で働くことに嫌悪した。公用の旅に出た李徴は発狂し、気がつくと虎になっていた。
そして、李徴は自身の内に抱えた「臆病な自尊心」と「尊大な羞恥心」とで、人食い虎に成り果てたのだ。才能を競うことの失敗を恐れ、教えを請う謙虚さもなかった結果、李徴は才能を無駄にした。しかし虎になってもなお、残した家族のことよりも詩業の名声を果たせなかったことを悔いる自分に慟哭の声をあげる。ふたりは別れて、袁傪が振り返ると、叢から飛び出した虎は月を仰いで咆哮し、姿を消した。(「山月記」より)
 
 
ジャンル:短篇小説
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