翻訳作品紹介
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第2回選定作品
作品タイトル
『ガラスの靴 ほか』
作家名
翻訳者
英語版 / Royall Tyler published
初版
1989年 講談社(文庫版)
キーポイント
  • 芥川賞候補にもなったデビュー作「ガラスの靴」を含む傑作短編集。
(あらすじ)
「日本の戦後世代の感性を、鮮やかにリアルに描く名作短編集」
 
 猟銃店の夜警をしている「ぼく」は、夜のあいだ、盗難と火気を警戒することが仕事だ。非力な「ぼく」は、強盗が押し入れば何の役にも立たないが、実際に事件が起きないことを前提に、持ち場を得ているという宙ぶらりんの存在だ。その「ぼく」は、猟銃店の店主に頼まれ、米軍軍医の家に鳥撃ち用の散弾銃を届けに行った。そして、その家でメイドをしている悦子(えつこ)に出会う。軍医夫婦が休暇で数カ月不在になるので、ときどき遊びに来てほしいと告げる悦子に、「ぼく」は、次第に恋心をいだくようになる。こうして、ふたりは頻繁に会うようになり、いろいろな作り話をしては「ぼく」を振り回悦子に、若い「ぼく」の恋心は燃えたっていく。(「ガラスの靴」より)
 
 小学校5年のときに「僕」は、弘前の小学校から、東京青山の学校に転校してきた。新しい学校の卒業生の多くは、名門中学への進学を果たしていることから、「僕」の母はこの学校への入学に熱心だった。
 弘前では、標準語で朗読をするだけで優等生扱いをされた。東京に移った後も、「僕」は教科書を読むのを得意としていたが、算数や理科となるとまったく見当がつかず、ついていけなかった。
 弘前に比べ、やたらと長い東京の夏休みのあいだ、「僕」は退屈をしていた。毎日午後になると銭湯に通い、一日中銭湯の湯気の中にいるような気持ちがした。
 夏休みも残り一週間ほどとなった頃、「僕」は銭湯で同級生の大熊(おおくま)に会う。大熊は「僕」に、夏休みの宿題の進み具合を訊いた。宿題帖を部屋の隅に積み上げたまま放り出していた「僕」は、その日から、宿題の山と戦うことになる。(「宿題」より)
 
ジャンル:純文学
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