翻訳作品紹介
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第3回選定作品
『波うつ土地』
作品タイトル
『波うつ土地』
作家名
翻訳者
英語版 / Louise Heal Kawai published
ドイツ語版 / Jutta Marlene Vogt published
ロシア語版 / Maria V. Toropygina
初版
1983年 講談社
キーポイント
  • 日本の伝統的な男女の役割の解放を試みた話題作
(あらすじ)
「さりげない日常の中の男と女の『生と性』」
 
「私はこの作品で登場人物を“男”、“女”という与えられた役割から解放しようと試みた」(「西鶴のかたり」1987年)と著者は述べている。従来の小説ではおいて、女性は男性作家の作り上げた理想的なステレオタイプであることにいらだった著者は、この作品の主人公を性別の固定観念に縛られない「ごくふつうの女性」として描いている。
 主人公の名前は共子、44歳。若い頃は詩を作っていたインテリだ。物語は共子が身長188㎝、42歳のカツミとぎこちない会話を交わすところから始まる。
その地域の文化会館のカフェテリアで同じテーブルについたカツミに、共子はビールをすすめる。彼女は既婚、彼も既婚だった。言葉によるコミュニケーションができないと感じた彼女は、ホテルで「性的交流による会話」にふける。
そのセックスにさえ飽きて、共子は突然、カツミを古くからの友人で30歳の組子に託して外国に旅立つ。外国にいる共子に組子は手紙を書き、自分がカツミと関係をもったと告げる。共子が帰国すると組子は自分が妊娠しており、その子の父親はカツミであると明かした。
 科学者が人間関係の成立を調べるように、著者は人間関係が築かれ、壊され、そして再び新たな関係が築かれる実験を繰り広げる。シュールレアリストのルイス・ブニュエル監督の映画にも似た傑作である。
 
 
ジャンル:大衆小説
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