翻訳作品紹介
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第3回選定作品
『夢の島』
作品タイトル
『夢の島』
作家名
翻訳者
英語版 / Charles De Wolf published
フランス語版 / Jean-Jacques Tschudin published
ロシア語版 / Tatiana Redko
初版
1985年 講談社
キーポイント
  • 都会を舞台に描いた小説の傑作
(あらすじ)
「巨大な都市のゴミの堆積地にひかれる男と、そこをバイクで疾走する女」
 
作品のタイトルになっている「夢の島」とは東京湾岸地域に実在する場所である。名前は美しいが、実際には東京から排出されたゴミの堆積する場所だ。「穴のあいたパンティーストッキング、黒表紙の手帳、スパゲッティの束、そして片方だけの赤い子供の運動靴……。そんな壊れ捨てられた屑物のひとつひとつが強烈な存在感を、濃密な生活のにおいを帯びて見えた」。
 主人公の境 昭三は50歳の誕生日を過ぎた人物。建設会社に勤務しており、高層ビル群や入り組んだ高速道路や地下鉄を建設して東京を変貌させていく会社の一員あることに誇りを感じていた。
 3年前に妻を亡くしてから、境は夢の島に引きつけられ、膨大なゴミの山に美しさを見いだしていた。ある日、彼は全身黒ずくめで大型バイクを乱暴に運転して夢の島を走り回る動き回る女に会う。2回目に会ったとき、バイクが事故をおこし、境は彼女の名前(林 陽子)と住所を知る。彼女を訪ねた境は、室内装飾業者に「陽子は悪女ですよ、会わないほうがいい」と言われた。
 その言葉は境の心に重くのしかかったが、境は神秘的な陽子に誘われてお台場に行く。そこは東京湾に再生された人口の島だ。見捨てられた島は緑で覆われ、土手には整然と木が植えられ、無数のサギが足にからんだ釣り糸が木の枝に絡まって死んだままぶら下がっていた。境は宙づりになって死んでいる鳥を埋めてやろうと考え木に登るが、木をはう蔓に足首をとられ、サギと同じように逆さまにつり下げられ、逆さになった東京の地平線を目に焼き付けながら息絶えてしまうのだった。
 
ジャンル:大衆小説
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