翻訳作品紹介
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第4回選定作品
『広津和郎作品集』
作品タイトル
『広津和郎作品集』
作家名
翻訳者
ドイツ語版 / Asa-Bettina Wuthenow
初版
1951年 六興出版(文庫版)
キーポイント
  • 時代を超えて瑞々しい、散文精神に支えられた作品群。広津の小説、評論の名編を厳選
(あらすじ)
「普通の人の喜怒哀楽に温かい目を注ぎ、洞察した作家の作品群」 
 
「現実を都合よく解釈したり、割引したりしない精神、現実をありのままに見ながら、しかもそれと同時に無暗に絶望したり自棄になったり、みだりに音を上げたりしない精神、良くも悪くも結論を急がずに、じっと忍耐しながら対象を分析していく精神」(散文精神について)。
 第二次世界大戦を挟んで活躍した小説家、評論家の広津和郎(1891−1968)は、社会の中の小説の位置について考察を深め、その精神に支えられた諸作は、時代を超えて新鮮である。この作品集には、名短編として名高い「巷の歴史」、中編小説「若き日」、そして「散文精神について」「徳田秋声論」「一本の糸」などのエッセイ・評論の秀作を収録。
 「徳田秋声論」では、50代まで質実に暮らし、愛妻を亡くした後、若い女性との愛欲に翻弄され、71歳で傑作『縮図』を書いた自然主義の大家を読み解いて賛美するなど、著者はリアリズム、ヒューマニズムに基づいて庶民の喜怒哀楽を認め、「インテリの弱さといって、インテリは何が故に弱いのであるか。そしてそれでは強いという事はどういう事なのか。それらの事をゆっくりと後に残って、じっくり答案を書こうとする作家はいない」(一本の糸)と、忍耐強く、対象に肉薄していく芸術家精神を訴えている。
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