翻訳作品紹介
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第4回選定作品
作品タイトル
『八犬伝』
作家名
翻訳者
フランス語版 / Jacques Lalloz published
初版
1951年 六興出版(文庫版)
キーポイント
  • 江戸の一大伝奇小説を現代に甦らせた傑作長編
(あらすじ)
「不思議な縁に導かれた8人の犬士が理想郷作りにひた走る」
 
 「世界伝奇小説の烽火、アレキサンドル・デュマの『三銃士』に先立つこと3年」。江戸時代後期、滝沢馬琴が28年の歳月をかけて完成させた『南総里見八犬伝』は、不思議な珠をもつ8人の「犬士」が運命に導かれて結集、武士道の義を貫いて闘う伝奇ロマン。
 安房国の城主里見義実の娘、伏姫は、城と救った犬・八房の妻になり、悪霊に取り憑かれた八房の心を癒し、命と引き替えに8つの珠を生む。後年、珠をもつ8人の犬士が現われ、縁に導かれて里見家に集い、理想郷を築き上げていく物語である。
 本書は、戦後日本を代表する娯楽作家で、古典伝奇文学に造詣が深かった著者が、『南総里見八犬伝』を咀嚼して再構成し、八犬士が活躍する「虚」の世界、貧しさや病いに耐えて執筆を続けた馬琴の姿を描いた「実」の世界をクロスオーバーさせ、独自の視点を加えて八犬伝の世界を現代に甦らせた山田版・八犬伝。
 妻子を愛してつましく暮らした俗物の滝沢馬琴が、デュマに先立つこと3年にして、想像を絶する波瀾万丈の物語をどうして完成できたのか。奇想天外な物語を生んだ「偉大な俗物」へのオマージュでもあるこの作品は、83年に刊行され、江戸時代と戦後日本の伝奇小説の鬼才が出会って生まれた傑作である。
 
ジャンル:小説
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