翻訳作品紹介
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第5回選定作品
『パンク侍、斬られて候』
作品タイトル
『パンク侍、斬られて候』
作家名
翻訳者
英語版 / Wayne P. Lammers
初版
2004年 マガジンハウス
2006年 角川書店(文庫版)
キーポイント
  • スピード感あふれる言語で書かれた、まったく新しい長編SF時代小説。
  • 俗悪だが憎めない人々が錯綜する、荒唐無稽な傑作SF時代劇。
(あらすじ)
 江戸時代、ある晴天の日。街道沿いの茶店に腰掛けていた浪人は、盲目の娘を連れた巡礼の老人を、抜く手も見せずに太刀を振りかざし、ずば、と切り捨てた。その場に居合わせた黒和藩藩士・長岡主馬が、なんの罪科もない老人をたたき斬った理由を浪人に訊ねると、その浪人・掛十之進は、巡礼の父娘は新興宗教団体「腹ふり党」の一員であり、邪教が伝播すれば恐るべき災いとなるから、事前にそれを食い止めたのだと言う。腹ふり党の伝播を案じる主馬は、腹ふり党対策要員として十之進を藩で召し抱えるよう、上司の内藤帯刀にかけ合う。黒和藩は、真面目すぎて融通が利かず、”正論公”と呼ばれる黒和直仁の治世下にあり、学を好み武術が苦手な内藤帯刀と、武芸に優れるが学問はからきし駄目な大浦主膳という2人の重臣が対立、内政は分裂状態にあった。十之進の目当てが仕官と礼金であり、腹ふり党対策の方法など知らないと見抜いた内藤は、大浦を失脚させるために十之進を使おうとする。大浦をわざと怒らせて、十之進の仕官を反対させ、腹ふり党の被害が現れた段で大浦の責任を追及する企てだが、教祖の乱倫才が捕縛された腹ふり党はすでに解散していた。内藤は「偽腹ふり党」を捏造しようとし、腹ふり党の中でもっとも凶悪だった残党・茶山半郎の扇動によって、黒和藩に阿鼻叫喚の惨事が訪れる。
 1962年生まれの著者は、高校時代からパンクロック歌手として活躍。歌手、詩人、俳優として特異な存在感を示し、95年から作家活動に入る。2000年、「きれぎれ」で芥川賞を受賞し、01年、『土間の四十八滝』で萩原朔太郎賞、02年『権現の踊り子』で川端康成文学賞。著者初の長編時代小説として04年に刊行された本作は、従来の時代小説の概念を打ち破る着想、ストーリー、キャラクター、パワーあふれる言語で書かれ、大きな話題を呼び、舞台化などに多メディア化された傑作である。
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