2020年度「現代日本文学の翻訳・普及事業」

JLPP 文化庁

第1回 日本文学インパクト BUNGAKUの現在地点 日本文芸誌の底力

司会

鵜飼哲夫
鵜飼哲夫Ukai Testuo
読売新聞東京本社編集局編集委員
1959年生まれ。中央大学法学部法律学科卒業。第1回〜6回JLPP企画委員。83年読売新聞社に入社。91年から文化部記者として文藝を主に担当。長く文芸担当記者を務め、安部公房、吉行淳之介、中上健次など多くの作家にインタビューを行う。書評面デスク、文化部編集委員を経て2013年より現職。コラム「『ウ』の目鷹の目」等を執筆。主な著書:『芥川賞の謎を解く 全選評完全読破』(文藝春秋)、『三つの空白 太宰治の誕生』(白水社)、編著に『芥川賞候補傑作選』(春陽堂書店)他多数。

パネリスト

矢野 優
矢野 優Yano Yutaka
新潮社「新潮」編集長
1965年生まれ。京都大学卒業。1989年、新潮社に入社。「ゼロサン」編集部、出版部(書籍編集)を経て、2003年より「新潮」編集長をつとめる。担当書籍に阿部和重「インディヴィジュアル・プロジェクション」、東浩紀「存在論的、郵便的」、平野啓一郎「日蝕」など。「新潮」では、大江健三郎「美しいアナベル・リイ」、柄谷行人「哲学の起源」、筒井康隆「モナドの領域」などを担当。
「新潮」
1904年(明治37年)、日露戦中に創刊。以来、日本近現代文学の作家に創作・批評の場を提供してきた。1946年、創刊500号記念号に「文壇と新潮」を寄稿した中村武羅夫は「海外の新しい思潮の流入につとめ、文学の新しい問題を提供するために努力し、新人の推薦と紹介とを以て本領とし、既成の勢力の温存を計るよりも、新興勢力の推進のために力を尽して、常に文壇に新風を送ることを以て使命として来た」と記しているが、その姿勢は現在にも受け継がれている。116年の歴史のなかで、川端康成、三島由紀夫、大江健三郎、村上春樹などによる掲載作品は国境を超え、世界の読書人に愛読されている。
坂上陽子
坂上陽子Sakanoue Yoko
河出書房新社「文藝」編集長
2003年、河出書房新社に入社。2004年より編集部に配属。主に単行本編集を手掛けた後、2013年からはシリーズ「池澤夏樹=個人編集日本文学全集」編集部へ異動。2019年1月より「文藝」編集長を務める。担当書籍に『想像ラジオ』(いとうせいこう)、『民主主義ってなんだ?』(高橋源一郎×SEALDs)、『出会い系サイトで70人と実際に会ってその人に合いそうな本をすすめまくった1年間のこと』(花田菜々子)、『居た場所』(高山羽根子)など。
「文藝」
1933年創刊。太平洋戦争の最中に唯一刊行され続けた、現存するものとしては日本で2番目に古い文芸誌。三島由紀夫「サド侯爵夫人」、古井由吉「杳子」、中上健次「枯木灘」など、日本文学史に残る数々の傑作を掲載。毎年冬季号で発表される「文藝賞」は、1962年の第1回の受賞者・高橋和巳をはじめ、田中康夫、山田詠美、長野まゆみ、星野智幸、綿矢りさ、羽田圭介、山崎ナオコーラ、青山七恵、町屋良平といった、文芸シーンに新たな風を吹き込む作家たちを輩出。2017年に同賞受賞の若竹千佐子「おらおらでひとりいぐも」は、同作で芥川賞を受賞し50万部を突破。他掲載作に松浦理英子「親指Pの修業時代」、柴崎友香「寝ても覚めても」、中村文則「掏摸」、鹿島田真希「冥土めぐり」、いとうせいこう「想像ラジオ」、柳美里「JR上野駅公園口」、村田沙耶香「消滅世界」など。
丹羽健介
丹羽健介Niwa Kensuke
文藝春秋「文學界」編集長
1971年東京生まれ。東京大学フランス文学科卒。94年、文藝春秋入社。出版局第二文藝部、週刊文春編集部、Title編集部、出版局第一文藝部、文學界編集部などを経て、2019年7月より文學界編集長。
「文學界」
文藝春秋が発行する月刊文芸雑誌。1933年(昭和8年)10月に小林秀雄、川端康成、武田麟太郎、林房雄らが参加し同人誌として文化公論社から発刊。第二次世界大戦後の1949年(昭和24年)から文藝春秋新社(後の文藝春秋)発行の商業文芸誌となる。現在、文學界新人賞を年一回公募している。近年の小説掲載作に柴崎友香「春の庭」、羽田圭介「スクラップ・アンド・ビルド」、又吉直樹「火花」、滝口悠生「死んでいない者」、村田沙耶香「コンビニ人間」、沼田真佑「影裏」、高橋弘希「送り火」、松浦理英子「最愛の子ども」、川上未映子「夏物語」、阿部和重「Orga(ni)sm」、山田詠美「ファースト クラッシュ」など。
Twitterアカウント:http://twitter.com/Bungakukai
鯉沼広行
鯉沼広行Koinuma Hiroyuki
集英社「すばる」編集長
東京大学大学院人文社会研究科修士課程修了。修士(文学)。文芸書、「小説すばる」、集英社文庫、集英社新書、翻訳などの編集に携わったのち、2019年6月より現職。
「すばる」
1970年に季刊の文芸誌として創刊し、1979年に月刊となる。すばる文学賞は第1回が1977年に発表され、これまでに森瑶子、佐藤正午、原田宗典、藤原伊織、松本侑子、辻仁成、中上紀、金原ひとみ、木村友祐、温又柔、新庄耕ほかの作家を多く輩出している。