



第2回JLPP翻訳コンクールの結果について
文化庁では、文芸作品の優れた翻訳家を発掘・育成するため、平成27年6月より公募してまいりました翻訳コンクールについて、このたび、第2回の受賞者を決定しましたのでお知らせします。また、審査員の講評、並びに最優秀賞受賞作品を掲載します。
なお、下記日時に受賞式及びシンポジウムを開催し、受賞者には文化庁長官より賞状及び盾を贈呈します。
翻訳コンクール受賞式及びシンポジウム
日程 | 平成28年3月11日(金) 12:30~16:00 |
会場 | 日本近代文学館(東京都目黒区駒場4-3-55) |
授賞式 | 12:30~13:00 受賞作品講評、受賞者の紹介及び賞状等の授与、受賞者の挨拶等 |
シンポジウム | 13:00~16:00 |
定員 | 100名 「現代日本文学の翻訳-----作家と翻訳家の対話(仮題)」 小川洋子氏 & Stephen Snyder氏 堀江敏幸氏 & アンヌ バヤール・坂井氏 松浦寿輝氏 & 辛島デイヴィッド氏 |
申込 | 参加ご希望の方は、2月22日(月)までに、JLPP「お問合せ」またはFAX03(3295)6065よりお申し込みください。メールにはお名前を明記ください。2月29日(月)までに受付完了のメール及びFAXを送ります。当日は受付完了メールのプリントまたはFAXをご持参ください。 |
授賞式 | 10:00~10:50 受賞作品講評、受賞者の紹介及び賞状の授与、受賞者の挨拶等 |
応募数 | 応募人数:61名(うち2件無効) 選考対象作品:英語59名(118作品) |
|
受賞者 | ※( )内は国籍、〔 〕内は選択した課題図書 | |
英語/ | 最優秀賞(1名) | サム・ベット(アメリカ合衆国) 〔「涙売り」「床屋嫌いのパンセ」〕 |
優秀賞(2名) | ニック・ジョン(オーストラリア) 〔「千日手」「床屋嫌いのパンセ」〕 皆本 飛鳥(ミナモト アスカ)(日本) 〔「涙売り」「床屋嫌いのパンセ」〕 |
|
審査委員 | 高橋和久 (東京大学名誉教授、英文学) スティーブン・B・スナイダー (翻訳家、日本文学研究者、ミドルベリー大学教授) ジャニーン・バイチマン (翻訳家、日本文学研究者、大東文化大学名誉教授) マイケル・エメリック (翻訳家、日本文学研究者、カリフォルニア大学ロサンゼルス校上級准教授) |
第2回翻訳者育成事業(翻訳コンクール)選評
全体講評
今回のコンクールには国内外より61名の応募があった。グローバライゼーションという掛け声にもかかわらず,むしろそれ故にか,異文化間のコミュニケーションの重要性が強く意識される時代にあって,この数字を多いと見るか少ないと見るかは立場によって異なるだろうが,いずれにせよ,各応募者の意欲と関心は高く評価されるべきであり,今後ともそれを維持してくれることを強く願う。なかでも,最終選考に残った11名の方々の翻訳はどれもレヴェルの高いものであり,課題作品間で翻訳の難易度には若干の差があると思われるにもかかわらず,例外なく今後に大きな期待を抱かせるものだった。審査委員一同,優劣をつけるのにうれしい苦悩を味わったことを告白して,総評としたい。
最優秀賞 サム・ベット氏作品講評
溌溂とした翻訳で,大方の審査員の支持を得た。特に小説部門「涙売り」の訳は,作品の詩情を見事に捉え,その底流にあるエロティシズムをも表現できている点,しかもほぼ自然な「英語化」に成功している点,が高く評価された。また評論・エッセイ部門「床屋嫌いのパンセ」は翻訳がなかなか難しいと思われるが,タイトルの魅力的な訳に見られる大胆さとアイロニーの内在するロジックを押さえた訳文に,優れた才能がはっきり窺える。瑕疵があるとすれば,訳者のあり余る才気が空回りしていると思われる部分があることで,そこでは巧みな意訳が原文のバランスを崩しているという懸念が残らないでもない。むしろ抑制された文体が力を持つということがもっと意識されてもいいだろう。しかし,若々しさを感じさせる熱のこもった訳文に見られる勇み足めいたところも,見方を変えれば訳者がいかに高いポテンシャルの持ち主であるかを示しており,最優秀賞にふさわしいと判断した。
優秀賞 ニック・ジョン氏作品講評
原文の日本語の意味をすべて伝えようと努めていて,好感の持てる訳文になっている。翻訳をどう考えるかにもよるが,こうした丁寧な姿勢はひとつの理想形として評価されるべきだろう。翻訳対象としては難物である小説「千日手」に挑んだ意欲は高く評価されるし,「床屋嫌いのパンセ」も言葉の選択に訳者の優れたセンスを感じさせる箇所が少なくない。問題は,両部門とも訳文にムラが散見され,文章の流れが損なわれているという印象を禁じえないことと,丁寧さが訳文の風味を消すように作用している面も否定できないことである。しかし,原文の意を出来るだけ汲もうとするこの訳者の謙虚さを高く評価する声のあったことを付記して,今後のさらなる精進に期待したい。
優秀賞 皆本 飛鳥氏作品講評
「涙売り」「床屋嫌いのパンセ」とも良質で自然な訳文に仕上がっており,その力強さ,安定感が一頭地を抜いていた。臨場感を伴った訳文でもあり,詩的な部分の翻訳の巧みさも特筆に価する。興味深いのは,同じ優秀賞を受賞したニック・ジョン氏の作品と比べると,英語の明快さ,トーンの一貫性で勝るが,それと裏腹に,「床屋嫌いのパンセ」に見られるアイロニーや原文の細部への目配りが不足しているのではないかという懸念が残ることである。実のところ,こうした相反する方向性は翻訳の宿命であり,それを兼ね備えた翻訳はきわめて難しく,また稀であろう。その意味で,あれこれ問題点を論う審査員一同は隴を得て蜀を望んでいるわけであるから,優秀賞は十分に高い評価であると自信を持って欲しい。
最優秀賞受賞作品
英語部門サム・ベット | 「涙売り」 [PDF] 「床屋嫌いのパンセ」 [PDF] |
「第2回JLPP翻訳コンクール」の実施について
このコンクールは終了しました。
第2回JLPP翻訳コンクール応募の皆さまへ第2回JLPP翻訳コンクール応募作品の郵送先が決定いたしましたので、お知らせいたします。 郵送先は、「個人情報保護法」に対応して決定されましたので、JLPP事務局の住所とは異なりますのでご注意ください。 また、応募作品は、課題作品のなかから、小説部門より1編、評論・エッセイ部門より1編の合計2編となります。 応募の受け付け期間は2015年6月1日(月)~7月31日(金)です。 その他、応募についての規定についてはサイト内の要項でご確認ください。 ●応募作品郵送先 (英語表記) JLPP Office T&K bldg 3-40-7, Kitaya, Souka-shi, Saitama 340-8501 Japan (日本語表記) 〒340-8501 埼玉県草加市北谷3-40-7 ティ・アンド・ケイパッケージ内 JLPP事務局 |
文化庁では、文芸作品の優れた翻訳家を発掘・育成するため、翻訳コンクールを以下の通り実施します。
★「第2回JLPP翻訳コンクール」応募用紙
- 応募資格
国籍、年齢は問わない。ただし、翻訳作品の単行本の出版経験を有する者は応募できない。雑誌等での掲載経験は可とする。
- 応募方法
- 専用の応募用紙をホームページよりダウンロードし、必要事項を記入する。
- 翻訳作品は、データ(CD-ROM)と出力したものを指定場所へ応募用紙とともに送付する。郵送先は2015年4月以降にJLPPホームページ上で発表する。
- 出力は、A4サイズ又はレターサイズ/縦長、横書、32行/1枚、文字は12ポイント、フォントはTimes New Roman、左右に1.5cm以上の余白、総ページ数及び通し番号を記入する。
- 翻訳者の氏名は原稿には記入しない。
- Eメール等、郵送以外の方法で提出された応募は受け付けない。
- 提出物に不備があった場合には原則的に受け付けないが、やむを得ない事情のある場合は個別に対応する。
- 提出物の返却はしない。
- 期間
作品受付期間2015年6月1日(月)~2015年7月31日(金) 当日消印有効
-
課題作品(1)小説部門
- 「涙売り」
- 小川洋子
- 「千日手」
- 松浦寿輝
(2)評論・エッセイ部門- 「床屋嫌いのパンセ」
- 堀江敏幸
- 「昭和が発見したもの」
- 丸谷才一
課題作品は以下からダウンロードしてください。希望される方には冊子を郵送しますので、下記問合せ先までご連絡ください。 -
翻訳点数小説部門、評論・エッセイ部門より各1点、計2点
-
翻訳言語英語
-
賞最優秀賞 1名、優秀賞 2名 賞状及び副賞
-
審査委員髙橋和久(東京大学教授、英文学)Stephen Snyder(翻訳家、日本文学研究者、ミドルベリー大学教授)Janine Beichman(翻訳家、日本文学研究者、大東文化大学名誉教授)Michael Emmerich(翻訳家、日本文学研究者、カリフォルニア大学ロサンゼルス校上級准教授)
-
入賞者発表 2016年1月末日
- 入賞者には、2016年1月末日発表前に直接、結果を通知する。
- JLPPホームページにおいて、入賞者のプロフィール、審査評を掲載する。
-
問い合わせ先JLPP事務局(現代日本文学翻訳普及プロジェクト)