翻訳作品紹介
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第3回選定作品
『プレーンソング』
作品タイトル
『プレーンソング』
作家名
翻訳者
英語版 / Paul Warham published
フランス語版 / Julien Calas
ロシア語版 / Alexander Mesheryakov
初版
1990年 講談社
キーポイント
  • リアリスティックで奥深い筆致は、小津安二郎の映画のような世界観。
(あらすじ)
「冬の終わりから真夏までの何気ない、4人の若者の生活」
 
一人称で語る主人公は30歳前後の会社員。名前は不明。20代の3人、アキラとよう子のカップルと会社員の島田が次々と東京にある彼の2LDKの小さなアパートにやってくる。時は1986年。彼らの奇妙な共同生活はその冬の終わりから翌年真夏の海辺に至るまでの半年間にわたって静かに展開していく。
 主人公は最年長でその場所の所有者のだが、リーダーではなく、居候を無抵抗に受け入れる。野良猫が好きな主人公だが、よう子に指摘されて初めて世話をするといった具合だ。ささやかな絆が彼らを結びつけ、その会話から次々と新しい感情や行動が引き起こされ、その化学反応がいきいきと描かれている。
 この作品の中盤から登場するもう一人の人物は、自称「映画監督」のゴンタ。「ぼくは物語って言うのが覚えられないんですよ。粗筋とか------」と語る。彼には、ドラマチックな出来事やきらめくようなストーリーの作品を撮影しようという要望がないのだ。それは、著者自身の小説に対する考え方を反映しており、デビュー作において、保坂はフィクション論を大胆に提示しているのである。
 保坂和志は同年代を代表する作家の一人で、村上春樹など戦後のベビーブーム世代よりもさらに若く、「何も起こらない」世代とも呼ばれ、多くの若手作家に支持されている。特別な事件は起こらず、何気ない日常生活のありのままを述べた作品である。
 
 
ジャンル:大衆小説
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