第1回選定作品
作品タイトル
『檻』
作家名
翻訳者
英語版 / Paul Warham
初版
1983年 集英社
1987年 集英社(文庫版)
キーポイント
- 複数の文学賞候補作にもなった北方ハードボイルドの最高傑作
(あらすじ)
「けものの気配がする闇に自分の躰が同化していく……」
滝野和也(たきのかずや)は、小さな暴力団の組員だったが、組長の死去に伴い、組が解散。それを機にやくざな世界から足を洗って、小さなスーパーを経営しながら、妻と平和に暮らしている。
滝野のスーパーでは、ひと月前から不愉快な事件が続いている。最初は、冷凍食品売場のケースから、凍り付いた鼠の死骸が出てきた。その次には、牛乳のパックに注射器で異物が混入された。損害もかなりの額になり、刑事も張り込み捜査をしているが、犯人は挙がっていない。そして今度はチンピラがいやがらせをしにやって来た。
近所のパチンコ屋の経営者が滝野のスーパーを買収したがっていることを知った滝野は、その経営者が一連の事件になんらかの関係があるのではないかと考え始める。
そして、その買収問題によって引き起こされるいざこざによって、滝野の中でとうの昔に捨てたはずの野生の血がよみがえる。邪魔をする者を何度も殴り、また滝野も何度も殴られる。幸せを感じていたはずの「檻」の中での平和な暮らしを捨てた滝野は、昔の相棒に会いに行き、自ら修羅場にもどってゆくのだった。
男の滅びの美学を、鮮烈に描いた北方ハードボイルドの最高傑作。
ジャンル:ハードボイルド小説
受賞:日本冒険小説協会大賞受賞(第2回)
(良質の冒険小説ならびにハードボイルド小説に贈られる賞)