翻訳作品紹介
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第1回選定作品
作品タイトル
『抱擁家族』
作家名
翻訳者
英語版 / Yukiko Tanaka published
フランス語版 / Elisabeth Suetsugu published
ロシア語版 / Maria V. Toropygina published
ドイツ語版 / Ralph Degen (第2回選定作品) published
初版
1965年 講談社
1988年 講談社(文庫版)
キーポイント
  • 発表当時の日本の高度成長期社会の色合いを強く表した傑作
(あらすじ)
「一家は仲睦まじいのがいいと思う」
 
 大学講師の三輪俊介(みわしゅんすけ)は、最近、妻の時子(ときこ)の様子が少しおかしくなっているのに気付く。清潔好きなはずなのに、家政婦・みちよの手抜きの掃除を注意しない。頼んでおいたボタンつけを一向にやらない。そして俊介は、みちよから、妻がアメリカ兵ジョージと肉体関係を持ったことを知らされる。
 ジョージは、ひと月前から、子どもの友達になってほしいと三輪家に招いていたアメリカ兵の青年。ふたりの情事について知らされた俊介はひどく動揺し、三輪家の家庭崩壊が始まる。
 俊介は、なんとか時子との関係を修復しようと努力をする。突然子どもたちと家の雑巾がけを行ってみたり、世田谷に家を新築することを決めたりして、夫婦関係もどうにか修復の軌道に乗りかけた時、俊介は愛撫した妻の乳房に小さなしこりを見つける。乳癌だった。
 時子は乳房の切除手術を受け、一旦は退院するが、間もなく癌が再発し、再び入院生活を送る。日に日に痩せていきミイラのようになっていく時子の病室を、俊介は毎日訪れ、必要であれば夜通し懸命の看護を続ける。しかし、その努力もむなしく、時子は二度と退院することなく、息を引き取る。
本作は、1965年発表で、当時の日本の時代背景が色濃く描かれているが、夫婦や家族の微妙な関係が音もなく崩れていく過程は、驚くほどに現代的である。今も時折、評論の対象となったりする本作は、著者の代表作との声も高い作品で、翌年の谷崎潤一郎賞受賞作品ともなった。
 
ジャンル:大衆小説
 
受賞:谷崎潤一郎賞受賞作(第1回)
(時代を代表する優れた小説・戯曲に贈られる賞)
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