第1回選定作品
作品タイトル
『百円シンガー極楽天使』
作家名
翻訳者
初版
1997年 河出書房新社
2001年 河出書房新社(文庫版)
キーポイント
- 漫画家、ホステス、演歌歌手…様々な職を渡り歩いた著者にしか描けないワイルドだけど純粋な世界
(あらすじ)
「夢と現実のせめぎ合いの中で生き抜く波瀾万丈の人生」
夏月(かづき)リンカはドサ回りの演歌歌手。同じプロダクションに所属するデュオ「健次郎(けんじろう)&デイビッド」と一緒に、地方のヘルス・センターやキャバレー、酒場などで歌っている。1日2回のショーをこなして、ギャラはたったの18,000円。事務所が仕事を入れてくれるのは1カ月のうち、せいぜい4、5日。観客からもらう「おひねり」とギャラを合わせて、ぎりぎり生活していける程度にしかならない。リンカたちは、ギャラの安い自分たちを、所詮百円シンガーだから、と自嘲する。
ある日突然、事務所の社長と連絡がとれなくなる。リンカたちが事務所に駆けつけると、そこにはギャラのかわりに、営業用グッズのタオルを残されているだけで、社長は逃亡したあとだった。数カ月先まで既にスケジュールが組まれているが、ギャラのもらえないリンカたちはその間「おひねり」だけで食いつないでいかなければならない。
事務所の倒産後、リンカと健次郎はそれぞれ新たな事務所を見つけ、以前より回数は少ないが、ドサ回りでショーをこなし、その日暮らしを続けていく。ほかの仕事をすすめてくれる人たちもいるが、リンカは、歌うことが好き。スポットライトが自分だけに注がれ、躰じゅうの細胞がにわかに蠢き出す感覚が好きなのだ。ときどき甘い夢を見て、騙されることもあるけれど、こんな人生も悪くない、とリンカは思う。
歌に魅せられ、骨の髄まで俗に浸った食いつめ者を描いた、著者の自伝的小説。
ジャンル:大衆小説、自伝小説