第1回選定作品
作品タイトル
『たけくらべ・にごりえ・十三夜』
作家名
翻訳者
初版
1987年 筑摩書房(文庫版)
キーポイント
- 25歳で夭逝した、明治時代を彩る女流文学第一人者の代表作品集
(あらすじ)
「明治の時代に、運命を背負って生きた女たちの悲劇の物語」
美しく気風のいいお力(おりき)は、飲酒店を装いながら私娼を抱える銘酒屋「菊の井」の一枚看板である。新しい、裕福な嫖客の結城(ゆうき)が身の上を問うと、三代伝わってのできそこないだといい、子供の頃の貧しい生活や、想い合った客、源七(げんしち)のことを語り始める。布団屋の主人であったその源七は、お力に入れあげて身上をつぶしてしまった。いまや土方となり、長屋で妻と息子と暮らしているが、源七は、お力への想いをたちきれずにいる。源七が「菊の井」にやって来ても、お力は会おうともせず、源七を狂わせてしまったことは、いまさら、どうにもならないと嘆く。行き詰まった源七は、ついにお力に刃物を向けた。社会の底辺で悶える女を描いた作品(「にごりえ」)
吉原の廓・大黒屋に住む美登利(みどり)は14歳。売れっ子の花魁を姉に持ち、愛嬌溢れる活発な美しい娘で、近所の少年の憧れである。この美登利と、龍華寺(りゅうげじ)の跡取り息子、藤本信如(ふじもとのぶゆき)は互いに淡い恋心を抱きながら、素直に言葉にすることができない。やがて、運命のときがやってくる。美登利は女郎となり、信如は仏門に入るべく学林に入学する。吉原の遊廓周辺の四季の移りかわりと風物を背景に、運命を背負った少年少女の日常を郷愁とともに描いた作品。(「たけくらべ」より)
ジャンル:純文学