第1回選定作品
作品タイトル
『錦繍』
作家名
翻訳者
初版
1982年 新潮社
1985年 新潮社(文庫版)
キーポイント
- トニー賞受賞演出家ジョン・ケアードにより2007年舞台化
(あらすじ)
「まさかあなたと再会するなんて、想像すらしてなかった……」
星島亜紀(ほしじまあき)は、障害のある息子を連れて訪れた東北で、10年前に別れた夫・有馬靖明(ありまやすあき)を再会する。蔵王のダリア園から、ドッコ沼へ登るゴンドラ・リフトに偶然乗り合わせたふたりは、対照的だった。上品な身なりの亜紀に対し、靖明は、鬚も剃らず、シャツも靴も汚れており、かなり落ちぶれた様子だった。
靖明と亜紀は長い交際期間を経て結婚したものの、結婚2年目に靖明が祇園のホステスとの無理心中を起こし、靖明だけが一命をとりとめる、という事件が起きる。お互い愛し合ってはいたものの、靖明は離婚を申し出、亜紀もまたその離婚に同意する。その後、靖明は、勤めていた亜紀の父親の会社を辞め、酒におぼれ、職を転々としていく。一方、亜紀は大学教授と再婚するが、幸せな結婚生活とは言えなかった。やっと授かった我が子には生まれつきの障害があり、自分の教え子の女子大生と関係を持つ夫には愛情を感じることができない。
亜紀は、偶然の再会に揺れる気持ちを落ち着かせるために、靖明に宛てて、離婚当時の自分の心情やその後の生活について手紙を書き綴る。そして、靖明もまた、心中相手との出会いから、事件当日のこと、離婚してから一緒に暮らした女性のことまでを亜紀に宛てて書き綴る。
往復書簡が、それぞれの孤独を生きてきた男女の過去を埋め織りなす、愛と再生のロマン。
ジャンル:大衆小説