第1回選定作品
作品タイトル
『ドクラ・マグラ』
作家名
翻訳者
フランス語版 / Patrick Honnoré
初版
1935年 松柏館書店
キーポイント
- あまりに奇抜な内容のため昭和10年の出版以来、毀誉褒貶相半ばする稀代の問題作
- 「日本一幻魔怪奇の本格探偵小説」と謳われた歴史的一大奇書
(あらすじ)
「犯人は『胎児の夢』!? 異常な状況設定の本格探偵小説」
蜜蜂のうなるような音を聞きながら目を覚ました「私」は、自分が誰で、どこにいるか思い出せない。そこに法医学部教授の若林鏡太郎(わかばやしきょうたろう)が現れて、そこは大学病院の精神病棟で、正木敬之(まさきけいし)教授が創設した精神病の治療場であると説明する。正木教授は、純然たる科学の基礎に基づいた、画期的な新学説を樹立し、その学説を立証してきた人物で、ひとつき前に亡くなったという。「私」は、正木教授の「狂人の解放治療」と名付けられた治療に関する実験の研究材料として、そこにいるそうなのだ。若林教授は、さらに、「私」が空前の犯罪事件に関係があることを告げ、その事件についての説明を始める。
その犯罪事件とは、地方の富裕な一族に属す呉一郎(くれいちろう)という青年が、夢中遊行を起こしている間に、従妹である許婚を絞殺した事件である。呉一郎は、以前にも実母が絞殺されたときに、そこにいながら、なにも覚えていないと証言したことがあった。
正木教授は、人間の細胞には、先祖代々遺伝してきた心理作用が集積され、脳は30兆に及ぶ細胞の意識をまとめているに過ぎないと唱え、呉一郎の事件は、精神の奥深くに潜在する先祖の心理遺伝が起こしたトリックだと主張。呉家の血統を中国に遡っていくと、先祖の絵師・呉青秀(ごせいしゅう)の妻殺害と、謎の絵巻物の存在にたどり着く。
呉一郎の母は、呉家を飛び出してからどんな生き方をしていたのか? 私生児として育った呉一郎の父はだれか? そもそも若林教授と正木教授の関係は? 忘我忘失症にある「私」は呉一郎なのか? 果たして、実験の本当の姿が見えてくる。
ジャンル:ミステリー