第1回選定作品
作品タイトル
『ぼぎちん』
作家名
翻訳者
初版
1994年 文藝春秋
1997年 文藝春秋(文庫版)
キーポイント
- バブル期の堪らなく浮薄な現象の中で、魂の呻き声をあげる人間像を描いた話題作。
(あらすじ)
「1980年代、日本のバブル期に咲いた 激しくて切ない恋物語」
1980年代初頭。時代はバブル経済に突入しようとしていた。人々の心はモノと金に走り、街にはそれまでになかった素敵なモノやお洒落な空間が溢れ、それらは皆、高価だった。そんな時代に、女子大生、沙耶(さや)は、週三日、親の目をごまかして銀座でホステスをやり、スケベエなおやじにさそわれるままに娼婦まがいのことをやってお小遣いをもらい、その金で適当に羽振りよく遊んでいるが、人生にむなしさを感じていた。ある日、沙耶は、堅気の生活を嫌って、怪しい投資顧問会社で大金を稼ぐ中年男「ぼぎちん」と出会う。沙耶は、ぼぎちんに居心地の良さを感じ、敬意と愛情を抱く。
ふたりは、バブリーな麻布十番のマンションで生活をはじめた。周りには、キンピカな高級クラブに集う見栄っ張りな人々や、株売買の狂騒と金に群がる亡者たちが蠢く。
ぼぎちんの仕事の浮き沈みのなか、気がつけば、待つだけの空っぽの毎日を送っている沙耶は、自分が何者なのか、訳がわからなくなり、行き詰っていく。やがて、美術展のキュレーションなどをする男カオルと出会い、ニューヨークへ逃げ出してしまう。
沙耶の視点で、バブル社会の恋愛物語が、軽快にかつ冷静に語られる。未曾有の経済繁栄を遂げた時代の風俗を描き、そこに蠢く人間の狂態と悲しみを描いた話題作。
ジャンル:大衆小説