翻訳作品紹介
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第2回選定作品
作品タイトル
『戦後短篇小説再発見2 性の根源へ』
作家名
翻訳者
フランス語版 / Jean-Jacques Tschudin & Pascal Simon published
初版
キーポイント
  • 戦後の性をめぐる「人間の風景」の変貌をたどる短編集。
(あらすじ)
「人間の奥深くに潜む、性の魔力」
 
 野村(のむら)は戦争中、一人の女と同棲をしていた。夫婦と同等の関係ではあったが、どうせ終戦を迎えたら全てが混乱した状況になるだろうと、特に婚姻届も出さず、戦争中だけの関係と初めから考えていた。女は小さな酒場の主人で、どの客とでも関係していた女だったので、野村は同棲しても女は他の男と関係を持つだろうと信じていた。
 終戦を迎え、戦争の間だけの愛情も終わると考えた途端、野村は張り合いのなさを感じ始める。野村は、女に愛情を感じているのだろうか……?(坂口安吾『戦争と一人の女』より)
 
 この2年間、「私」は革命にも参加せず、国家や家族のために働きもせず、ただ女たちと飲食をするために金を儲けて暮らしていた。最近では、弓子(ゆみこ)と房子(ふさこ)という貧乏な働く女性とつきあっていた。弓子は新聞社に勤めており、仕事が多忙な上に飲食を共にする男たちを多く持っている。一方、房子は神田の品のよい喫茶店で働いているので、「私」は自由に会いに行くことができた。「私」の弓子に会えない苛立は、房子と会うことで沈めることができる。房子は「おいしいものを食べるのがわたし一番好きよ」と言い、ハッカ菓子、アイスクリーム、カツレツ……と欲望を満たすのだった。そしてまるで飲食のお礼のように、「私」に身体を差し出すのだった。(武田泰淳『もの喰う女』より)
 戦時下から現代まで、エロスとしての人間に迫る11篇。
 
ジャンル:純文学
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