翻訳作品紹介
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第2回選定作品
作品タイトル
『おけい』
作家名
翻訳者
英語版 / Kenneth J. Bryson published
初版
1974年 朝日新聞社
1981年 文藝春秋(文庫版)
キーポイント
  • 1869年、アメリカに渡った日本移民団の少女の物語。
(あらすじ)
「アメリカに今も眠る、会津出身の日本初の農業移民おけいの物語」
 
 明治元年、雪深い会津に暮らす15歳の町娘おけいのもとに、江戸の武家に嫁いだ松乃(まつの)が、初産の後、夫の討死も禍して体調を崩し寝込んでしまったとの便りが届く。松乃を慕うおけいは、すぐに江戸へと向かう。おけいは、途中知り合ったオランダ人商人ヘンリーに、松乃と松乃の乳飲み子を馬車で会津に向かわせることを頼み、自分は歩いて会津に戻る。
 松乃たちより5日ほど遅れて会津に戻ったおけいは、ヘンリーが松乃に結婚を申し込んだことを耳にする。大好きな松乃が異人と再婚をすることを快く思わないおけいだったが、松乃の幸せを奪う権利は誰にもないと自分に言い聞かせる。それと同時に、松乃に裏切られたと感じ、その想いを初恋の人金吾(きんご)へと募らせるようになる。しかし、金吾の心が自分には向いていないことを知る。やがて、金吾や美しい武家娘たちが会津戦争の渦中に身を投じ、次々に戦火の中で命を落としていく。
 生き残ったおけいは東京へ逃げるが、薩摩長州を中心とした西軍政府に捕まる。そのとき助けてくれたのは、ヘンリーと弟のエドだった。そして、おけいはエドの屋敷で松乃と再会する。松乃は生き残った会津人達と一緒に新天地を求めてアメリカに渡る計画を話し、おけいもこの計画に加わらないかと誘う。こうして、おけいを含む会津人一行はカリフォルニア州コロマに渡る。言葉も分からぬ異国の地で農場を築き、ワカマツ・コロニーと名付け、茶や竹の栽培を試みる。しかし、乾燥の激しい土地での農場はうまくゆかず、コロニーは崩壊し、移民団は散り散りになってしまうのだった。
 明治維新の激動の中を生きたひとりの少女の運命を描く長篇歴史小説。
 
ジャンル:歴史小説
受賞:吉川英治文学賞候補作(第60回)
(優れた国民文学に贈られる賞)
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