第2回選定作品
作品タイトル
『暗夜行路』
作家名
翻訳者
初版
1937年 改造社
キーポイント
- 近代日本文学を代表する作家による長編小説。
- 独創的なリアリズム文学を樹立した記念碑的作品。
(あらすじ)
「祖父と母との間に生まれた主人公の、心の練磨と浄化を描く心境小説」
時任謙作(ときとうけんさく)は、6歳のときに母が産後の病気で亡くなり、その後、祖父に引き取られる。成長し、父の送金で小説を書きながら放蕩生活をする謙作は、幼馴染の愛子(あいこ)に結婚を申し込むが断られる。さらに、祖父の妾だったお栄にも結婚を断られてしまう。その原因が、自分が祖父と母の子供であるという「呪われた運命」にあることを知らされる。動揺する謙作は、小説を書くことに集中しようとする。しかし惨めに落ち込む気持ちを止めることはできなかった。
空虚さから娼婦のもとに通っていた謙作は、京都に居を移す。そこで見染めた直子(なおこ)と結婚したが、初めて生まれた子供が丹毒で死んでしまう。ようやく暗い路に曙光を見ていた謙作は、運命の悪意を感じ、それと同時にひねくれた考え方をしている自分自身にも嫌悪を感じて、さらに落ち込むのだった。その後、謙作の留守中に、直子が、従兄と過ちを犯したことを知らされる。謙作は妻を許そうと決意するが、許す気持ちと裏腹に、癇癪を起こし苛立つ自分を抑えられず、ついに、感情に駆られて妻を突きとばしてしまう。
矛盾する気持ちを見直そうと、ひとり謙作は鳥取の大山に向かった。そこで、出生や妻の過失に拘泥する思いを乗り越えようとする心の変化を感じる。山歩きをする謙作は、自分が大きな自然のなかに溶け込んでいく陶酔感に酔った。
自暴自棄になりながらも、過酷な境遇を強い意志で生き抜こうとする主人公の心の葛藤の物語。
ジャンル:純文学