翻訳作品紹介
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第2回選定作品
作品タイトル
『枯木灘』
作家名
翻訳者
ロシア語版 / Yura Okamoto published
初版
1977年 河出書房新社
1980年 河出書房新社(文庫版)
キーポイント
  • 毎日出版文化賞と芸術選奨文部大臣新人賞に輝いた記念碑的な大作。
(あらすじ)
「煮えたぎる血族の愛憎を描く圧倒的感動の物語」
 
山が海に迫り、荒涼とした和歌山県の枯木灘海岸。その近くの貧しい被差別部落で、秋幸(あきゆき)は私生児として生まれ育った。
 母のフサには、亡夫とのあいだに4人の子供がいた。秋幸が生まれたあと、竹原繁蔵(たけはらしげそう)と再婚したフサは、秋幸だけを連れて家を出た。残された長男の郁男は逃げた母を呪い続け、24歳で首を吊って死んだ。秋幸は、それが自分のせいであると感じていた。
 26歳になった秋幸は、義父の起こした建築会社で土方をしている。土を相手に働くとき、自分に絡まる血族への葛藤も消え、自由を感じることから、秋幸は土方の仕事を愛した。
 秋幸の実父、浜村龍造(はまむらりゅうぞう)は、駅裏のバラックに火を放ち金儲けをしたと噂されていた。巨体で「蝿の王」と呼ばれ、地域の人々から白い目で見られていた龍造は、フサの他にも二人の女を孕ませており、秋幸には腹違いの姉妹兄弟がいる。そのひとりである19歳の秀夫の敵意を持った視線を、秋幸は感じていた。
 すべての災いが龍造から始まる中、秋幸は自分に流れる半分の血を憎悪し、一方で父親の姿を追う。秋幸は実父と対峙することで、血族の呪縛から逃れようとする。しかし叔父の初盆の夜、暴力的な衝動から、秋幸は腹違いの弟秀夫を殺害してしまう。
 路地に生きる人々の血脈の争いを描き、複雑に絡み合った愛と憎しみを人間の原型に探る記念碑的大作。
 
ジャンル:純文学
 
受賞:毎日出版文化賞受賞作(第31回)
(広く読者に支持され、出版文化の向上に貢献した出版物に贈られる賞)
   芸術選奨文部大臣新人賞受賞作(第28回)
(文学において優れた業績をあげ、新生面を開いた者に贈られる賞)
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