翻訳作品紹介
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第2回選定作品
作品タイトル
『忍ぶ川』
作家名
翻訳者
英語版 / Andrew Driver published
初版
1961年 新潮社
1965年 新潮社(文庫版)
キーポイント
  • 貧窮の中、いたましい過去を労りあって結ばれる夫婦の純愛をうたった名作。
(あらすじ)
「はじめて味わう愉悦を想い、ふいに泣きたいような衝動に駆られる」
 
 私立大学生の「私」と志乃(しの)は、料亭「忍ぶ川」で知り合った。料亭と言っても、小料理屋に毛が生えた程度の店で、志乃はそこで働く女だった。「私」は、志乃の好意も商売のうちと疑いつつも、夜になると志乃のまごころと好意を信じられずにはいられなくなり、店に足を運んでしまう。
 何度か通ううちに、二人とも深川と縁が深いことがわかり、一緒に深川散策に出かける。そこで、お互い似たような不幸な家庭環境であることを知ることとなり、さらに思いは深まり、「私」は志乃に結婚を申し込む。
 ほどなくして、病床に伏していた志乃の父親が危篤になり、志乃のたっての願いで、「私」は志乃の父親に会いにいく。志乃の家族は、神社のお堂に仮住まいをしていた。そのお堂で、やつれはてた志乃の父は「私」に対し、「よろしゅう、お願い申します」と最後の言葉を残して逝く。それと同時に志乃の家族は住む場所を失う。
 「私」は雪深い郷里に戻り、両親と姉の前で志乃とささやかな結婚式を挙げる。結婚式の夜、遠く馬橇(ばそり)の音を聞きながら、「これからは自分とあなたのことだけを考える」と言う志乃。生まれて20年、家らしい家に住んだことのない志乃と「私」は、それぞれ新しい生活へ思いを馳せるのであった。(『忍ぶ川』より)
 
ジャンル:純文学
 
受賞:芥川龍之介賞受賞作(第44回)
(優れた純文学短編作品中最も優秀なるものに贈られる賞)
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