翻訳作品紹介
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第2回選定作品
作品タイトル
『花埋み』
作家名
翻訳者
英語版 / Deborah Iwabuchi & Anna Isozaki published
初版
1970年 河出書房新社
1975年 新潮社(文庫版)
キーポイント
  • 医師出身の人気作家、渡辺淳一が描くリアリティ溢れる初期の代表作。
(あらすじ)
「私が女医になって、女性たちを救ってやることはできないものか…」
 
 女性には学問は必要ないという風潮の強かった明治初期に、医学の道を志した一人の女性がいた。日本で最初に医師の国家資格を持った女性、荻野吟子(おぎのぎんこ)である。
 吟子は16歳で嫁いだものの、3年後に夫から淋病をうつされる。抗生物質も存在しなかった時代だったので、吟子は子どもを産めない体になってしまい、婚家を出る。吟子の周囲には、吟子を慰める人々が集まったが、吟子より7つ年上で男勝りの荻江(おぎえ)だけは違った。病気で家に戻れたことで吟子は自分の思いどおり才能を伸ばせるようになると言うのだった。
 病状が悪化した吟子は、名医と名高い医師の診察を受ける。診察室で、異性の医師数人に局所を見せなければならない屈辱を味わった吟子は、同じような羞恥に苦しむ女性のために、女医を志す決心をする。
 吟子は、母の反対を押し切り、家を捨て東京に出て、御茶の水の東京女子師範(現在のお茶の水女子大学)で学んだ後、下谷の私学校で医学の勉強を始める。
 念願の医学の勉強を始めたものの、授業料、医学書代の捻出に頭を悩ます吟子に、荻江が家庭教師の内職を見つけてくれる。こうして、経済問題の目処がついた吟子は、私学校を抜群の成績で卒業する。卒業後、吟子は、女子の受験はまだ許されてなかった医術開業試験を志願するが、願書が却下され続ける。
 状況を知った吟子の知人たちの働きかけにより、女性も医術開業試験受験が可能になった年、3人の女性が受験をする。前期試験の唯一の女性合格者となった吟子は、後期試験も見事合格。かくして、政府公許の女医第1号が誕生する。
 本作は、女性であるが故の様々な困難に直面しつつ、必死の生きる吟子の波瀾万丈の生涯を描いた長編。
 
ジャンル:大衆小説
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