翻訳作品紹介
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第3回選定作品
『青猫家族輾転録』
作品タイトル
『青猫家族輾転録』
作家名
翻訳者
英語版 / Wayne P. Lammers published
フランス語版 / Sophie Refle
ドイツ語版 / Till Weingaertner published
ロシア語版 / Yura Okamoto
初版
2006年 新潮社
キーポイント
  • 日本の家族や社会を舞台に、人間の心の奥深くを描いたユーモアあふれる傑作
(あらすじ)
「リストラ、娘の不登校……50歳の男の家庭人としての奮闘の物語」
 
 この作品で著者はいくつものドラマに満ち、それが重要な発展につながるポリフォニックな物語を編み出している。
 物語の主人公は矢嶋ユキという名の51歳の男性。妻との間に17歳の長女・涼とまだ2カ月の次女・由佳という二人の娘がいる。彼がなぜこの歳でこんなに幼い子の父親になったのかは、やがて明らかにされる。物語は、現在の主人公の一家の出来事と、30年前に39歳でなくなった叔父との回想を交えながら進められていく。ユキは自分に大江健三郎やノーマン・メイラー、マルキ・ド・サドなどを教えてくれたこの叔父を尊敬していた。
 ある日、ユキは知り合いの女性から彼女の元夫の荻田がガンと知らされ、思わず笑みを浮かべる。商社勤務のユキは荻田の裏切りによって辞職を余儀なくされたのだ。リストラにあったユキはインターネットでブランド・マーケティングを行う会社を興し、ささやかな成功を収めていた。娘の涼は情緒不安定になり、岩本裕太と家出して妊娠する。この苦境に直面してユキ夫妻は途方に暮れる。一方、成長を続ける彼の会社を買収したいという申し出もあり、ユキはこの問題でも決断を迫られていた。
 この作品の主人公は、小説には滅多に登場しない、世間のどこにでもいる誠実な人物で、まじめに生きている。
小説とはまさにこうあるべきという、誠実な小説である。
 
ジャンル
純文学
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