翻訳作品紹介
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第3回選定作品
作品タイトル
『笑いオオカミ』
作家名
翻訳者
英語版 / Dennis Washburn published
ロシア語版 / Alexander Dolin
初版
2000年 新潮社
キーポイント
  • 敗戦下の日本で繰り広げられる「ジャングル・ブック」のような世界観の作品
(あらすじ)
「眼がさめるたびに、みつおが必ずそばにいてくれた」
 
 みつおは、物心ついたときから父親と雑司ヶ谷霊園で野宿をして暮らしていた。母親の記憶はまったくない。ある日、みつおは、墓地で男2人女1人が死んでいるのを見つけ、警察に届け、死んでいた片方の男の家に自分が目撃したことを説明しに行った。そして、それから5年後、17歳になったみつおは、死んだ男の12歳になる娘・ゆき子の前に姿を現す。
 事件目撃直後に父親を病気で失い、身寄りがいなくなったみつおは、ゆき子の学校の近くで彼女を待ち、一緒に旅に連れ出す。上野でゆき子のセーラー服と学生カバンを古着に換え、ふたりは東北へと向かう。
 雨で頭のてっぺんからつま先までずぶ濡れになったり、列車の中でゆき子が下痢になったり、みつおが熱を出したり、列車の旅は楽ではなかった。北へ向かうほど寒くなることに気がついたふたりは、次に南を目指す。やがて、列車を乗り継ぐこと自体がふたりの目的になってしまい、列車の行き先など確認せずに旅を続けるようになる。
 ふたりはずっとこのまま一緒に過ごすことを夢見る。しかし、そんな矢先、ゆき子は警察に保護され、みつおはゆき子誘拐の容疑で逮捕される。こうして、引き離されたふたりは、またそれぞれ、ひとりぼっちになってしまうのだった。
警察がみつおを連行していった瞬間、彼の眼は、まるでオオカミのように青く光っていた。それがゆき子が彼を見た最後だった。
 
ジャンル:純文学
 
受賞: 大佛次郎賞受賞(第28回)
(優れた散文作品に贈られる賞)
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