翻訳作品紹介
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第3回選定作品
『巴』
作品タイトル
『巴』
作家名
翻訳者
英語版 / David Karashima
フランス語版 / Silvain Chupin
初版
2001年 新書館
キーポイント
  • タフで痛烈な、形而上学的推理小説
(あらすじ)
「東京下町の三角地帯で繰り広げられる官能の迷宮」
 
東京の庶民的な下町を舞台とする、官能と流血のドラマは香港のフィルム・ノワールの香りを放っている。主人公の大槻(おおつき)は34歳で、東京大学を中退し、やくざの仕事をしているうちに、売春を斡旋し、麻薬中毒に陥る。
 ある日、近所の下町をぶらついていた大槻は杉本と名乗る男に出会い、映画を見ないかと誘われる。この夏の不気味な黄昏時に悪夢は始まった。大槻は篝山(こうやま)という書道の大家の家に連れて行かれ、そこで篝山が今プロデュースしている作品を見せられる。その作品はいたいけない10代の少女が乱交するポルノまがいの映像と、昆虫のクローズアップが交互に現れるグロテスクな映画であった。大槻はそこで篝山の孫娘でその映画のスターになっている朋絵を紹介され、映画の残りを撮影してほしいと依頼される。
 大槻は依頼を引き受けるが、ある日篝山の子分、高畠から理由もわからぬまま虐待を受ける。理不尽な仕打ちに対する復習のため、また消えた篝山の謎を解くため、大槻は篝山を追跡した。実際には篝山は書道家でも何でもなく、著名な書道家の故・篝山征道の弟、武朗という道楽者にすぎなかった。朋絵も篝山の孫ではなかった。大槻は篝山の後を追い続けるが、真実は東京を取り巻く用水路網に消えていく。
「巴」とは三角形を意味する言葉で、この作品では実在する東京の下町地区の三角地帯で繰り返し起こる奇妙な出来事が綴られている。
 
 
ジャンル:純文学
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