第4回選定作品
作品タイトル
『写楽殺人事件』
作家名
翻訳者
英語版 / Ian MacDonald
フランス語版 / Aude Bellenger-Sugai
ドイツ語版 / Yukari Hayasaki & Sabine Mangold
初版
1986年 講談社
キーポイント
- 研究家の死と「謎の絵師」。芸術的要素を絡めた傑作ミステリー
(あらすじ)
「謎の絵師の正体に肉迫する若き浮世絵研究者。その周辺で殺人が…。」
篆書家で在野の浮世絵研究者だった嵯峨厚が、謎の死を遂げた。浮世絵研究の大家、西島俊作教授の助手を務める津田良平は、嵯峨の葬儀で西島ゼミの先輩にあたる国府と再会する。西島と嵯峨は研究上の見解の相違から5年来冷戦状態にあり、西島門下の国府が嵯峨と親しかったことに津田は驚く。
古書店に行き、嵯峨の義弟で、古書店主の水野から画集を手に入れた津田は、1枚の作品に添えられた「東洲斎写楽改近松昌栄」の文字に目が釘付けになる。江戸時代後期、わずか10ヵ月間に140枚以上の作品を発表し、忽然と姿を消して「謎の絵師」と言われる東洲斎写楽。写楽は、いったい何者だったのか? 新説の手がかりを得た津田は、国府の妹、冴子と写楽の謎を追う。ところが、津田の研究成果を横取りした西島が焼死体となって見つかって−−。
ミステリー界の登竜門、江戸川乱歩賞を1983年に受賞した本格推理長編。浮世絵研究者だった著者が、ミステリーと浮世絵という2つの興味を合致させ、まず写楽の謎を追う過程で作中の人間関係の伏線を張り、やがて事件が起き、殺人事件の謎が解かれていく。浮世絵に関する豊富な知見と本格推理のスリルを交錯させた、巧みな手法が特徴の娯楽作である。
ジャンル:推理小説
受賞:江戸川乱歩賞