第4回選定作品
作品タイトル
『悪人』
作家名
翻訳者
フランス語版 / Gérard Siary
ロシア語版 / Ekaterina Tarasova
初版
2007年 朝日新聞社
キーポイント
- 「悪人」とはいったい誰なのか? 社会構造に鋭く切り込んだ犯罪小説
(あらすじ)
「誰もが善人であり悪人でもある。揺れ動く人間の姿を示した衝撃のラスト」
長崎市に住む若い土木作業員、清水祐一は、携帯電話の出会い系サイトで知り合った保険外交員の女性、石橋佳乃を絞殺した。警察は、被害者が同僚に交際をほのめかしていた裕福な大学生、増尾をまず聴取し、増尾の供述と目撃者の証言から、容疑の焦点を祐一に絞っていく。
おとなしい性格で、人を侮辱したり、危害を与える“悪人”ではない祐一は、なぜ犯行に及んだのか? 出会い系サイトで知り合った別の女、馬込光代と逃避行を続けるうち、祐一は光代と強く惹かれあい、真実の愛を育むが、2人の逃亡と純愛は悲劇的な道をたどっていく。加害者・祐一と被害者・佳乃の関係は?
殺人事件の背景、家族らの群像と心情が克明に書かれ、「真の悪人とは誰なのか?」を問う犯罪小説。芥川賞作家である著者は、2006年に新聞連載され、07年に単行本化されたこの作品で新境地を開拓、アイロニーに満ちた衝撃的なラストが話題を呼んで、幅広い読者を獲得し、大佛次郎賞と毎日出版文化賞を受賞した。評論家の浅田彰は、この作品を「様々な視点を交代させて高速回転する万華鏡のように進む物語。言い換えれば、それは誰もが善人であり悪人でもある現実をじっと見つめる正真正銘の作家の視線」と絶賛した。
ジャンル:犯罪小説
受賞:大佛次郎賞、毎日出版文化賞