第4回選定作品
作品タイトル
『芥川龍之介短編集』
作家名
翻訳者
初版
1986年 筑摩書房(文庫版)
キーポイント
- 芥川龍之介の名作と埋もれた傑作を集めた短編集
(あらすじ)
「大正文壇の寵児・芥川龍之介の傑作短編集」
ある日の夕暮れ時、一人の下人がさびれた洛中の羅生門の下で雨宿りをしていた。雇い主から暇を出された下人は、行き場所がなく、途方にくれていたのだった。ひと目につかず、一晩雨風をしのいで眠れるよう、羅生門の二階に昇った下人は、そこに無造作に棄てられている何体かの死骸の中にうずくまる老婆を見つける。老婆は、死体から髪の毛を一本一本抜いているのだった。それを見た下人は、激しい憎悪と反感を覚える。
老婆の前に歩み寄った下人は、太刀をかまえ、なぜ死体から髪の毛を抜いているかを老婆に尋ねる。すると老婆は、ここにいる死人たちは、髪の毛を抜かれるぐらい、生前に悪事を働いてきたのだし、餓死したくないので、仕方なくしているのだ、と言う。それを聞いた途端下人は、すばやく老婆の着物を剥ぎ取り、自分もそうしなければ餓死する体だ、と老婆を手荒く死体の上に蹴落とし、夜の底へと消えていった。(「羅生門」より)
池の尾の高僧・禅智内供(ぜんちないぐ)は、地元では知らない者がないほど、人並みはずれた長い鼻の持ち主。長さは5、6寸あり、上唇の上から顎の下まで、細長い腸詰めのような物がぶら下がっているのである。
50歳を超えた内供は、常にこの鼻を苦に思っていた。しかし、自分の鼻を気にしていることを人に知られることが嫌だったので、表面では気にならないようなふりをしているが、日々の暮らしの中でも、長い鼻を持つことは実際不便だった。
そこで、内供は、実際以上の鼻を短く見せる方法を鏡を覗いて熱心に考えたが、うまい方法が見つからない。ある日、弟子が京都で、知人の医師から長い鼻を短くする方法を教わって来た。そして、内供はその方法を試してみるが……。(「鼻」より)
ジャンル:純文学