第1回選定作品
作品タイトル
『赤穂浪士』
作家名
翻訳者
フランス語版 / Jacques Lalloz
初版
1928年 改造社
キーポイント
- 日本人なら誰もが知る仇討ち物語『忠臣蔵』を独自の視点で描いたベストセラー作品
(あらすじ)
「武士道とはなにか? -元禄時代の武士たちによる仇討ちの物語-」
元禄14年江戸城松の廊下で、赤穂藩主、浅野内匠頭(あさのたくみのかみ)が吉良上野介(きらこうずけのすけ)に刃傷におよんだ。内匠頭は翌日切腹となり、赤穂藩はお家断絶。一方、吉良はお咎めなし。喧嘩両成敗が武家の掟であるのに、一方的な幕府の裁定を不服とする赤穂藩国家老の大石内蔵助(おおいしくらのすけ)をはじめとする藩士たちは浪士となり、上野介の仇討ちを図る。浪士たちは、商人や町医者に姿をかえて江戸に潜み、忍耐を重ねた2年目の12月、吉良邸に討ち入る。そして炭小屋に隠れた上野介の首級をとり、本懐を遂げる。その後浪士たちは主君の墓のある泉岳寺に向かい、墓前に仇討ちを報告。赤穂浪士の仇討ちは当時の人々に感銘を与えるが、将軍の命により46人が切腹することとなる。
著者は、この実際の仇討ち事件を題材にした、従来の物語に独自の視点を置き、仇討ちを単なる忠君思想の復讐とせず、官僚的な幕府への反逆ドラマと見たてた。時勢も安定した元禄時代、武士に戦う機会はなく、社会体制の移行とともに武士道は江戸城の官僚政治に組み込まれていく。そのなかで、大石内蔵助たち「古い」武士道に殉じるものと、武士道を政治に利用するものたちの拮抗を描いた。廃れ逝く武士道を、哀悼を持って語る歴史絵巻である。
ジャンル:歴史小説