第1回選定作品
作品タイトル
『天上の青』
作家名
翻訳者
初版
1990年 毎日新聞社
1993年 新潮社(文庫版)
キーポイント
- 実際の事件を題材とした話題作で、複数回映像化される
- 死刑廃止を訴える著者による、殺人犯と主人公との心の交流を描いた問題作
(あらすじ)
「連続殺人鬼に語りかける主人公、そのこころは届くのか?」
波多雪子(はたゆきこ)は、庭先で朝顔の手入れをしているときに、宇野富士夫(うのふじお)に声をかけられた。マユの濃い整った顔立ちの富士夫は、庭の青い朝顔が美しいので種がほしいという。自宅で和裁の仕事をしている雪子は、編集の仕事で忙しい妹とふたり暮らしだ。以後、富士夫は時々雪子を訪ねては、話をするようになる。
富士夫は離婚してから、母親から小遣いを貰い、実家でブラブラと過ごしている。そんな暮らしぶりを義兄に非難されるたび、家を飛び出して車を走らせる。手当たり次第に女に声をかけ、自分は詩人だといってホテルへ連れ込む。あるとき、ホテルに誘った女子高生に、未成年を犯したと逆に金を請求され、その女子高生を殺害する。その後も、富士夫は、相手が気に食わないと暴力的になり、衝動的な殺人を繰り返す。人を殺すたびに、富士夫は雪子に会いに行く。富士夫は、事件のことは知らず、自分を受け入れて自然に振舞う、慎ましい雪子の姿に安心感を覚えるのだ。5人の女性を殺害した富士夫は、さらに、小学5年の男の子にまで手をかける。そして、ついに捜査の手が富士夫に及ぶ。
逮捕された富士夫は、拘置所から雪子に手紙を書く。雪子は、富士夫のために弁護士を雇う。連続殺人鬼を擁護するかのような雪子の態度に、妹や世間は批判の目を向けるが、雪子は、富士夫との手紙のやりとりを続ける。そしてある日、雪子は、テレビで富士夫の死刑が執行されたことを知る。
ジャンル:犯罪小説