第1回選定作品
作品タイトル
『坊っちゃん』
作家名
翻訳者
初版
1929年 岩波書店(文庫版)
キーポイント
- 明治期の文豪、夏目漱石の作品中で最も多く読まれているロングセラー
- 「日本文学で典型的な日本人を描いた作品」と評された注目の物語
- 痛快・滑稽でありながら、内にひそむ人間の孤独な心情ただよう名作
(あらすじ)
「明治の文豪による、痛快新任教師騒動記」
子供の頃から無鉄砲で正義感の強い「坊っちゃん」。両親は、乱暴な坊っちゃんよりも色白で女形が似合う兄を贔屓し、家のなかでは、下女の清(きよ)だけが坊っちゃんの見方だった。母に次いで父が亡くなると、兄は東京の屋敷を売って九州へ行ってしまう。家族も家もなく、独りになった坊っちゃんは、数学教師となり、単身四国に赴任した。物語では、そこでの坊っちゃんをめぐる中学校の教師たちや、町の人々との騒動が痛快に語られる。
新任教師にいたずらの洗礼をする生徒達。のんびり構えているようで、なかなか狡猾な町の人々。美しいが、お金の切れ目でちゃっかり婚約を破棄する「マドンナ」。それでも、文句も言わず折り目正しい英語教師の「うらなり」君。教頭の「赤シャツ」は、太鼓持ちの画学教師を従えて、学校の実権を握ろうと画策する。「赤シャツ」に対抗するのは、数学教師の「山嵐(やまあらし)」だ。こうして遠方の地で、坊っちゃんは人々に巻き込まれながらも、孤独を感じていた。このときも、坊っちゃんにとって、真の理解者は、清だけであった。
やがて、「赤シャツ」一派と「山嵐」の対決のとき。正義感に駆られた坊っちゃんは「山嵐」を助けて乱闘に巻き込まれ、その責任をとって学校に辞表をたたきつける。
東京に戻った坊っちゃんを待っていたのは、変わらぬ愛情を注ぐ、優しい清の姿だった。
ジャンル:純文学