第1回選定作品
作品タイトル
『藤沢周平短編集』
作家名
翻訳者
初版
1976年 立風書房
キーポイント
- 所収「竹光始末」は山田洋次監督の映画「たそがれ清兵衛」の原作ともなった藤沢周平の名作
(あらすじ)
「時代小説の名手・藤沢周平の傑作短編集」
浪人武士・小黒丹十郎(おぐろたんじゅうろう)は仕官職を就くことを希望し、周旋状を持参し、妻子と供に海坂藩物頭の柘植八郎左衛門(つげはちろうざえもん)を訪ねるが、あいにく柘植は4、5日ほど外出中だった。小黒は、旅籠に泊まって柘植の帰りを待つことにする。
実際には、新規召抱えはとっくに終わっており、すでに5名ほどが採用になっていた。しかし、小黒の応対をした柘植の妻は、継ぎ当てだらけの小黒一家の着物を見て、憐れみを感じ、宿を紹介し、古着を包んで小黒に渡す。
数日後、柘植は小黒に面会して、新規召抱えはすでに終わっており、当分新たに人を雇うことはない上、紹介者である人物とは20年前に2度会っただけで私的なつきあいはないことを説明する。小黒の落胆ぶりを見た柘植は、何となく気持ちがすっきりしないのを感じ、小黒の奉公口を探してみることにする。こうして、柘植からの連絡を待つため、そのまま旅籠に泊まる小黒であったが、宿代がなく、大事な刀を売らざるを得ない状況に陥った。
しばらくして、ようやく待ちわびた柘植から吉報が届く。お上から上意討ちの指示が出たので、小黒を推薦したとのことで、成功すれば七十石の報酬を手にすることができるという。小黒は討手を引き受け、相手である余吾善右衛門(よごぜんざえもん)の家へと急ぐ。
小黒が余吾の家の門を開け、庭に歩み入ると、玄関の上がり口に余吾が腰をおろしていた。余吾は、武家勤めが嫌になり国へ帰って百姓をやるつもりなので、見逃してほしい、と小黒に頼む。
余吾の気さくな話しぶりに、小黒も大事な刀を売って宿代を払った話をして、大刀の中身が竹光であるのも見せた。相手の大刀が竹光だと知った途端、余吾は突然自分の刀をつかんで大黒に斬りかかってくるが、小黒の小太刀に胴を深々と斬られる。(『竹光始末』)
ジャンル:時代小説