翻訳作品紹介
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第1回選定作品
作品タイトル
『異人たちとの夏』
作家名
翻訳者
英語版 / Wayne P. Lammers published
ロシア語版 / Andrey Zamilov published
初版
1987年 新潮社
1991年 新潮社(文庫版)
キーポイント
  • 日本のテレビ史に残る数々の名作ドラマの脚本を手がけた山田太一の小説
(あらすじ)
「静かすぎる夏、死んだはずの両親に出逢う」
 
 妻子と別れ、それまで仕事場に使っていたマンションに住居を移したシナリオ・ライターは、孤独な日々を過ごしている。離婚の際、多量の感情を費やしたので、当分の間、他人との接触は快楽を含めて、必要ないと思っている。しかし、オフィス街にあるこのマンションで過ごす夜は、恐ろしいほどの静かで、孤独を感じずにはいられない。
 ある日、浅草に落語を聴きにいったライターは、12歳で死別した父とそっくりな男に出逢い、誘われるままに、男の家へ行く。そして、男の部屋で、ふたりを出迎えた女は、ずっと前に他界した母の姿そのものだった。ライターの足はたちまちすくんでしまい、涙がこみ上げてくる。しかし、その部屋には、新型の家電製品やラジコンなど、両親の持ち物とは考えにくいものがあった。
 どう見ても30代の夫婦に、両親がするように世話をしてもらい心安らぐ40代のライター。その不思議な安らぎを求めて、ライターの足は浅草へと向かってしまう。両親に会うことで幸福を感じるライターだったが、同時に自分がやつれていくのも感じ始める。
同じマンションに住む年若い恋人は、ライターの身を心配し、「もう決して彼らと逢わないで」と懇願する。しかし、ライターは恋人の目を盗み、浅草の両親のもとを訪れ続けるのだった……。
 異界の人々との奇妙なふれあいのひと夏を描いた、山田太一の代表作。
 
ジャンル:大衆小説
 
受賞:山本周五郎賞受賞作品(第1回)
(優れた物語性を有する小説・文芸書に贈られる賞)
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