翻訳作品紹介
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第2回選定作品
『母よ』
作品タイトル
『母よ』
作家名
翻訳者
ドイツ語版 / Thomas Eggenberg published
ロシア語版 / Tatiana Redko
初版
1991年 講談社
キーポイント
  • 実母の顔も知らず、母親に抱かれた記憶もない主人公の心情を綴った感動物語
(あらすじ)
「母よ、あなたの素顔が見たい……。顔も知らない母にあてた切実な想い」
 
 本作は5つの関連した物語からなり、それぞれ「母よ」という言葉で始まっており、親に対する子供の真摯な愛が感じられる。主人公が2歳のときに母親が亡くなったため、彼には母親の記憶がまったくない。父親は別の女性と結婚しており、主人公(および兄姉)の母は妾だったのである。父は母子の存在を、主人公が7歳になるまで秘密にしていた。
 最終的に父の本妻は子供たちを受け入れ育てることになるが、育ての母である継母への遠慮もあって主人公は実母への想いを無理に抑えこんでしまう。継母が亡くなって数年が経つまで、実母への想いを口にすることはなかった。ひとたび口にすれば、母のイメージが心の中で急速に大きくなるとわかっていたのだ。
 主人公に残されたのはたった一枚の写真と、母が伯母に宛てた手紙と、兄や姉から聞かされる断片的な話だけ。彼はこれらの手がかりをもとに母親のイメージを築き上げようとし、母にあてた痛切なメッセージを残す。
 
ジャンル:純文学
 
受賞:読売文学賞(第43回)
(小説、戯曲、評論・伝記、詩歌俳句、研究・翻訳の5部門について前年の最も優れた作品に贈られる賞)
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