第2回選定作品
作品タイトル
『アマノン国往還記』
作家名
翻訳者
初版
1986年 新潮社
キーポイント
- 近未来的な女性優位社会での性と宗教の革命を描いた大冒険物語
(あらすじ)
「究極の女性化社会で『男と女の関係』の復権を図る、司祭Pの冒険物語」
司祭Pは、一神教の「モノカミ教団」が支配する世界から、「アマノン国」という女性が支配する国へ、布教のために派遣された宣教師団のひとり。アマノン国は遠方の孤立した国で、高い文明水準を維持しながら、千年の鎖国を続ける幻の国である。モノカミの宣教師たちは、一人用遠距離航行船に乗り込み、丸い頭に長く尾を引く航跡を残しながら、卵子に突入する精子のようにアマノン国に向かった。しかし、到達できたのは先頭のPの船のみ。浜辺に打ち上げられたPが目にしたのは、下半身裸で平然と立ちはだかり、Pを見下ろす女たちだった。Pは学んだ古代アマノン語を頼りに使命を伝え、海辺の田舎から、洗練された首都のトキオへ招かれる。トキオでは、アマノン政府によって国賓として扱われ、首相のユミコスからアマノン国の国際化推進のために協力を要請される。
アマノン国は、思想や観念を受け容れず、実益のみが意味をもつ実質主義の国だ。男を排除し、生殖は、管理された精子バンクの精子との人工受精で行われ、人工子宮で育てられる。実際のセックスにより生まれた子どもは「野合の子」と呼ばれ、蔑まれている。男は少ないうえに、ほとんどが「ラオタン」と呼ばれる宦官だ。Pは、セックス・妊娠を通して、アマノン国に「男」と「女」のあり方を復活させる「オッス革命」を遂行しようと、テレビでセックスの実演を始めるが……。
ジャンル:純文学
受賞:泉鏡花文学賞(第15回)
(金沢市出身の泉鏡花の功績をたたえ、同市の文化的伝統継承発展と文化水準向上を図るため、すぐれた文芸作品に対し贈られる賞)