
第2回選定作品

作品タイトル
『死の棘』
作家名
翻訳者
初版
1977年 新潮社
キーポイント
- 1990年カンヌ国際映画祭で審査員グランプリした作品の原作
(あらすじ)
「夫の情事によって、平穏な時は止まり、妻は狂気にとりつかれる」
本作は敏雄という男性と、神経衰弱を病む敏雄の妻ミホの危い関係を描いた小説である。働き者のミホは夫と二人の子どもたちのために平和な家庭を保とうとしていたが、敏雄の浮気を知って狂気に陥り、繰り返し発作に襲われるようになっていく。
ミホは、夫の過去をあばきたて、偏執狂的な攻撃をつづける。その一方で、敏雄は、妻にひたすら詫び、許しを乞う。子どもたちは、両親の凄まじいぶつかり合いの間で怯えながらも、必死に両親をなだめようとする。作家である敏雄は書くことができなくなり、精神的におかしくなりかける。しかし、最後には、彼は妻に対する自分の「罪」の深さを悟り、自分のことは顧みず、ひたすら妻の魂を救うために人生を捧げようとする。
著者は自分たち夫婦の名前をそのまま使ったこの物語を1960年から1976年まで短篇の形で異なる文芸誌に発表した後、1977年に全12章の長編小説として単行本を刊行。本作の題名は聖書の「死の棘は罪なり、罪の力は律法なり」(コリント前書:第15章56節)からの引用。
ジャンル:純文学