翻訳作品紹介
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第2回選定作品
作品タイトル
『本格小説』
作家名
翻訳者
英語版 / Ann Sherif
初版
2002年 新潮社
2005年 新潮社(文庫版)
キーポイント
  • 発表後たちまち「究極の古典」と絶賛された大長篇
(あらすじ)
「運転手から大金持ちになった伝説の男の物語」
 
ニューヨーク郊外に住む水村(みずむら)家の食卓で、ある晩、父親の知人のアメリカ人に雇われた運転手のことが話題にのぼる。その運転手とは、東太郎(あずまたろう)という20歳そこそこの中卒の日本人。しかし太郎は運転手を数カ月で辞め、機械工として日本の会社に勤めた後、グリーンカードを申請し、セールスマンとして働き始める。そして、更に、ユダヤ系のビジネスマンと手を組んで会社を起こし、アメリカに渡った日本人の出世頭と言われるまでになった。
 それから数年後、水村家の次女、美苗(みなえ)は、ニューヨークの知人から、太郎の消息が不明である旨を聞く。美苗は、カリフォルニアの大学で日本文学を教えているが、ある日、日本で出版社に勤めていたという祐介(ゆうすけ)という青年が大学に訪ねてくる。祐介は、3年前に信州で太郎と会い、美苗の名前を聞いたと言い、太郎の過去について語り始める。
 信州に休暇で訪れていた祐介は、自転車の故障から、偶然、太郎と出会い、彼の過去も知ることとなった。太郎は、満州から引き上げてきた家族の継子で、その出自から、家庭でも学校でもいじめられていた。その状況を知った太郎の親類が、太郎を自分の手元に置いて育てる決意をする。それまでみすぼらしかった太郎は、身ぎれいになり、勉強もできるようになって、同じ家に住む病弱な少女、よう子に淡い恋心をいだく。やがて、中学生になってもふたりの仲が良すぎると、よう子の家族がふたりを引き離す。その後、数年、隠れて文通を続けていたが、太郎が19歳になりよう子と再会するも手酷く振られてしまう。
 生涯の恋に破れた太郎は、アメリカに渡り運転手となった。そして、その15年後、大富豪となって再び日本に現れた。すっかり立派になった太郎の帰国に、よう子とよう子の家族の平穏な日々が少しずつくずれていく。ふたりの数十年の想いはどうなったのか……? 
 
ジャンル:純文学
受賞:読売文学賞小説賞受賞作(第54回)
(小説、戯曲、評論・伝記、詩歌俳句、研究・翻訳の5部門について前年の最も優れた作品に贈られる賞)
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