翻訳作品紹介
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第3回選定作品
作品タイトル
『赤い橋の下のぬるい水』
作家名
翻訳者
英語版 / Giles Murray published
フランス語版 / Silvain Chupin published
ロシア語版 / Galina Dutkina published
初版
1992年 文藝春秋
1996年 文藝春秋(文庫版)
キーポイント
  • 2001年に日本が誇る巨匠・今村昌平によって映画化。カンヌ国際映画祭でも話題を呼んだ。
(あらすじ)
「私、水がたまると、ひどいことをしてしまうの……」
 
 ぼくは、ある日スーパーで、フラミンゴのようにすばらしく首の長い女が、チーズを万引きするのを目撃する。まるで露光を間違えた写真みたいに、しらじらとその女が胸に残って離れないぼくは、ふとドアが開くたびに、中からその女が出てくるのではないか、と期待してしまう。
 後日、その女と偶然に再会したぼくは、女の家に招かれる。女は、サエコと名乗り、万引きしたチーズを半分に分けてくれる。まるで罪を分かち合うようにチーズを食べるふたりは、ごく自然に体を重ねる。しかし、サエコの体が揺らぐたびに、せせらぎのような音がする。その音が何なのかを考えていたぼくが、ふと我にかえると、サエコは瞳をてらてらと光らせ、ぼくを見つめていたのだった。次の瞬間、突然に鼓膜から噴き出したかと思うほどの激しい水音がし、ぼくの体はぬるい湯で激しく洗われた。
 いったい何が起きたのかわからないでいると、サエコは、男と交わらないと体に水が溜まり、水が溜まってくると悪いことをしてしまうのだ、と説明する。そして、ぼくに「水を全部出してほしい」と頼む。
 こうして、水を出す女と水を出させる男の契約めいたものがはじまる。芥川賞作家が描く、奥深く不埒な性の世界。
 
ジャンル:大衆小説
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