第4回選定作品
作品タイトル
『長い時間をかけた人間の経験』
作家名
翻訳者
ロシア語版 / Evgeny Kruchina
初版
2000年 講談社
キーポイント
- 長崎で被爆した著者が描く、圧倒的事実の<生と死>
(あらすじ)
「私の半生とは一体何であったのか……?」
1945年8月9日、長崎に投下された原爆によって被爆した<私>は常に、被爆を根にした死と背中合わせに、半世紀を生きてきた。ほとんどの被爆者がそうであったように、<私>もまた「ぶらぶら病」とか「なまけ病」とか呼ばれる、疲れやすく厄介な健康状態で、毎年8月になると、うつ症状に悩まされるのだった。
「8月9日」という日付にしばられ、死と共存する<私>は、「命」の意味について常に考えてきた。そして、一段と疲れやすくなった身体に「老い」の症状を感じ、古希を目前にして「いつか行きたい」と願望をいただいていた、遍路の旅に出る。自分の半生とは一体何であったのかを考えながら、札所を巡る<私>は答えを得ることができるのだろうか……。
爆心地から1.4キロの地点の兵器工場で勤務中に被爆した著者が描く、苦渋に満ちた被爆者の想い。
ジャンル:原爆文学
受賞:野間文芸賞受賞作品(第53回)
(すぐれた小説・評論に与えられる賞)