翻訳作品紹介
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第4回選定作品
『由煕 ナビ・タリョン』
作品タイトル
『由煕 ナビ・タリョン』
作家名
翻訳者
ドイツ語版 / Verena Nakamura-Methfessel published
初版
1997年 講談社
キーポイント
  • 日本と韓国の狭間に生き、37歳で夭折した著者の魂の記録
(あらすじ)
「留学生活に傷つき、母国を去った在日韓国人女性の悲劇」
 
 母国、愛することができません−−。在日韓国人として日本に生まれ育ち、自らのルーツを求め、母国への理想を抱いて韓国の名門大学に留学した女子大生・由煕は、韓国と韓国人との生活に違和感を抱き、「外国」のような母国を愛せずに日本へ帰る。由煕は、韓国籍でありながら日本人みたいなもの。ソウル近郊にある岩山のように、剥き出しにさらけ出しあう韓国人たちを前に、彼女の繊細な感受性は打撃を受けてしまった(「由煕」)。
 留学生活に傷つき、母国を去らねばならなくなった在日韓国人女性の悲劇を描き、芥川賞を受賞した「由煕」、著者がソウル大留学中に書き上げたデビュー作「ナビ・タリョン(嘆きの蝶)」「かずきめ」「あにごぜ」を収録。
 在日韓国人として生まれた著者は、差別と偏見を受けた青春時代を経て、日本と母国である韓国の狭間でもがき苦しみ、92年、37歳で急逝した。この作品は、アイデンティティを探し求めてひたすらに生きた著者の魂の記録である。文芸評論家の渡部直己は、「ページを繰るたびに私たちの胸を打つのは、彼女の早すぎる死ではなく、正真正銘の作家がいたという事実だ」とその作品世界を高く評価している。
 
ジャンル:純文学
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