翻訳作品紹介
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第5回選定作品
『半島を出よ』
作品タイトル
『半島を出よ』
作家名
翻訳者
初版
2005年 幻冬舎
2007年 幻冬舎(文庫版)
キーポイント
  • 文壇のトップランナーが描きあげた、財政破綻し、国際的孤立を深める近未来の日本に起きた奇跡。
  • 北朝鮮コマンドに侵攻された福岡を救うのは誰か。北朝鮮反乱軍による「福岡侵攻」を描いた近未来小説。
(あらすじ)
 2011年、作戦名「半島を出よ」が発せられ、ハン・スンジン率いる北朝鮮の武装コマンド9人が小型船で日本に侵入、プロ野球開幕戦が行われていた福岡ドームを占拠した。2時間後、484人の兵士を乗せた複葉輸送機が来襲、増員された部隊は市中心部を制圧し、自分たちは北朝鮮の反乱軍で「高麗(コリョ)遠征軍」だと名乗り、市民、自衛隊、在日米軍に対する攻撃は行わないが、遠征軍統治のもとに福岡の独立を宣言する。もともとはNGOの主宰者で、パフォーマンスで人気を得た木戸昌明総理をはじめとする日本政府の対策は空回りし、失策で民間人の犠牲者を出してしまう。在日米軍は対テロ特殊部隊を持たず、経済が崩壊、失業者が増し、国際的孤立を深める日本を助けるために、アメリカが優秀な対テロ部隊を送るはずもなかった。万事休すと思われたその頃、福岡の一角にある倉庫群で動きが起きていた。C倉庫に住む詩人のイシハラを慕って集う少年たちは、親からも親戚からも福祉施設からも見放された凶暴な前科者ばかりだった。メディアから流れる情報を観察し続けていた少年たちは、遠征軍の強さを理解しながら、彼らの中にある破壊願望を強めていく。イエメンの武装グループと繋がる元銀行員を介して武器弾薬を手にした彼らは、高麗遠征軍を破壊対象として立ち上がり、遠征軍の本部があるホテルへの潜入に成功。孤立した近未来の日本を救った奇跡とは−−。
 北朝鮮から逃げられなかった男の手記にインスパイアされた著者が、脱北者へのインタビューを経て2005年に発表した近未来小説の大作。毎日出版文化賞、野間文芸賞を受賞した。大学在学中の76年、『限りなく透明に近いブルー』で衝撃的デビューを飾った著者は、日本文学の最先端を走り続ける人気作家。映画監督としても活躍、政治経済や時事報道など文学以外の分野へも関心を深め、幅広い知見を文学作品に結実させている。
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