翻訳作品紹介
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第4回選定作品
『日高』
作品タイトル
『日高』
作家名
翻訳者
英語版 / Philip Gabriel published
ドイツ語版 / Bruno Rhyner published
初版
2002年 新潮社
キーポイント
  • 実際の遭難事件をモチーフに、人間と自然との対峙を描く。行動派作家による山岳小説の傑作
(あらすじ)
「雪と氷に閉ざされた極限の4日間。青年は死の瀬戸際で何を考え、何を見たか」
 
 北海道・日高山脈の最高峰、幌尻岳。悪天に不安を覚えながら山頂を目指した大学山岳部のパーティ6人は、雪洞で就寝中、雪崩に巻き込まれて遭難し、全員が死亡する。奇跡的に即死せず、凍死するまで4日間を生き延びたリーダーの小田桐昇は、分厚いデブリ(雪崩の雪)に圧迫され、氷漬けの状態で眠りに入っては、恋人や仲間たちと未来を生きていく夢を見る。即死した仲間たちの傍らで4日間を生きた青年は、死の瀬戸際で何を考え、何を夢見たのか?
 1965年に起きた実際の遭難事件をモチーフにした山岳小説。著者は、大学時代に学生運動を経験、日本各地やアジアを流浪、職を転々としながら小説を書き続け、行動派作家として自然環境保護に長く取り組み、近年は仏教への関心を深めている。
 本作は、地図の裏に家族への感謝と別れの言葉、仲間への思いを記していた遭難者の遺書を手がかりに、危険を冒してでも山に挑む人間の情熱と極限状態での心理、人間の力ではどうすることもできない自然の驚異を、巧みな筆致で描きあげた長編叙事詩ともいえる作品。1981年の「ミニャ・コンガの悲劇」も素材にし、人間の山への憧れと自然の驚異との対峙を鮮やかに描きあげている。
 
ジャンル:山岳小説
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