翻訳作品紹介
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第5回選定作品
『阿修羅ガール』
作品タイトル
『阿修羅ガール』
作家名
翻訳者
英語版 / Stephen Snyder
フランス語版 / Jacques Lalloz
初版
2003年 新潮社
2005年 新潮社(文庫版)
キーポイント
  • 新たな才能の出現として話題を呼んだ、”覆面作家”の傑作長編。
  • 17歳少女のモノローグで混濁した世を描きつくした、傑作エンターテインメント。
(あらすじ)
 17歳の女子高生、アイコは、大して好きじゃない同級生の佐野となんとなくホテルに行き、アダルトビデオで覚えたような気持ちの悪いセックスをされて、自尊心がへこんでしまう。アイコが本当に好きなのは、小学校の同級生だった金田陽治で、もう6年来、片思いをして少女的(ガーリッシュ)に悩んでいる。翌日、へこんだ気分のまま登校したアイコは、美人のマキら6人の少女にトイレに連れて行かれてシメられそうになり、膝蹴りでマキをボコボコに逆襲。喧嘩する女の子たちの間に陽治が割って入り、アイコを救ってくれた。実は昨晩、アイコと別れた後に佐野が誘拐されてしまい、佐野の切断された右足の指と1000万円を要求する手紙が、佐野の家に届いたという。佐野の事件を話し合うアイコと陽治の前に、白昼堂々、泣きながら公園のベンチでセックスをしている男女がいた。男女は、「グルグル魔人」を名乗る殺人犯に三つ子の子供を惨殺された吉羽さん夫婦で、少年による異常犯罪が続発する世間では、インターネットの巨大掲示板《天の声》で煽られた子供同士の〈アルマゲドン〉と称する殺戮と暴動が広がっており、暴漢の手をかいくぐって陽治が助けに来てくれることを期待したアイコは、自分の殺戮指令を《天の声》に書き込む。陽治は助けに来てくれるのか、アイコの恋の行方はどうなるのか……。
 2001年、ミステリ小説『煙か土か食い物』でメフィスト賞を受けてデビュー、「新たな才能の出現」と話題を呼び、以降、純文学へも活躍の場を広げた著者は、1973年生まれで、本名・学歴・職歴などは非公表の”覆面作家”である。03年刊行の本作は、「今」を生きる10代の少女のモノローグを駆使し、インターネットの掲示板や少年による猟奇殺人事件など、最先端の社会現象、”カルチャー”を巧みに取り込んだ衝撃的な長編小説で、発表当初から物議をかもし、三島由紀夫賞を受賞した。著者はメディアアート、評論、翻訳、イラストでも非凡な才を発揮している。
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